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『リレキショ』 中村 航 

kage

2015/05/17 (Sun)

結局、半沢良は誰なのか。
分からずじまいだけど、ほんわかしたストーリーに、本当の正体なんてどうでもいいか、と思えてしまった。
なりたい自分になる。それがリレキショ。

主人公は姉と二人暮らし。アルバイト先に出す履歴書を書くところから、ストーリーは始まります。
ただ、通常じゃないのは、自分の学歴、生年月日、名前までも、想像して書いているのです。
そうして始まった深夜のガソリンスタンドのアルバイト先で、ひとりの少女と出会います。
出会いは思いがけないきっかけ。なんとも興味深い手紙を渡されて、主人公の「半沢良」は、まだ話した事のない不思議少女にはまって行きます。
本当は他人である「姉」との優しく穏やかな暮らし。少女の魅力的で奇天烈な手紙。深夜のガソリンスタンドでの静かな時間。
「半沢良」は、なりたい自分をリレキショに書き込み、自分を自分色に作っていきます。

彼を囲む人たちの温かさを、読み進めていくとしみじみ感じていきます。
そう、半沢良とは、弟でもないし、本当の名前も違う。なのに、それがどうしたの?とでも言うように、平凡で淡々とした暮らしがそこにある。

前に読んだことのある「100回泣くこと」でもそう思ったけど、この作者さん中村航さんは、ユニークだけど普通感のある、何気ない淡々とした日常を描くのが上手くて、だからと言ってつまらない文章でない。引き込まれる何ががある。そんなお話しを書く人だなあ、と思いました。
有り触れた生活を有り触れた感のない、冗長にならずに段々と興味をそそられる文に描けるのが、とても上手いなあ、と、うらやましい才能です。雰囲気のある文章表現が好きですね。私の理想の文体です。

結局、半沢良は誰なのか。

ほのめかし的に後半、彼の友人らしき人を登場させ、半沢良の過去を想像させる部分はありますが、最後まで、はっきりさせずに謎のまま終わらせてる。そこが、読者にいろいろ探りを入れさせるテクニックなのだなあ、と。
最初私は、彼は記憶喪失なのかな?と思ったけど、最後に本当の名前を名乗っている。と言うことは、意図的に昔の自分を封印していることになる。
しかし、素性を明らかに出来ない理由を、周りの人たちは聞こうとしない。そんな居心地のよさがある。

これからの自分は自分で決める。自分でリレキショに書き加えていく。
履歴書は過去だけど、リレキショは未来。

前向きに生きる爽やかな若さが印象的な小説です。

リレキショ

価格:1,404円
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