魔人探偵脳噛ネウロ20~21巻 あらすじ&感想

 ネウロがジェニュインを屈服させた理由は、『新しい血族』の情報を白状させるため。ジェニュインの口からシックスの正体が明かされる。
 シックスは製薬会社を買収し、各国から拉致した人間で人体実験を行っていた。その目的はバイオ兵器の開発。シックスの元へあらゆる兵器の技術が集まっていると言う。そしてさらにネウロがシックスの潜伏場所を吐かせようとした時、ジェニュインは自らの口を封じるため自爆した。
 その頃シックスは「Ⅹ」を強化ガラスの中で初期化させ、生物兵器としての進化を完成させていた。「Ⅹ」の新しい名は「ⅩⅠ(イレブン)」。17歳の少女。それが本来のⅩの姿だ。

 ひとヤマ超えても心休まる暇もないとぼやく弥子に、思いがけず笹塚から釣りの誘い。ネウロと弥子、笹塚たち警察グループ、助っ人の本城が岩場に集まり釣り大会がスタート。
 この機会に弥子は、前から気になっていた娘・刹那の死について本城に質問する。すると本城は「犯人を殺したいほど憎んでいるが、殺す機がめぐってこない」と打ち明ける。弥子はその言葉の意味を追求せず胸にしまった。
 一方、笹塚とネウロも密談中。盗聴されない岩場にやってきたのは極秘の話をするため。
 釣りイベントは混乱のあげくお開きになるが、この日以来、笹塚は行方不明となった。

 心配した弥子が警視庁へと足を運ぶと、資料室に出しっぱなしにしてあった笹塚の家族殺人事件のファイルを目にする。
 10年前、笹塚の両親と妹が自宅で何者かに殺害され、死体が切り刻まれて木の箱に入れられる事件が起きた。怪盗「Ⅹ」第一号事件とされるものだ。笹塚が行方知れずになったのは、この事件を追ってのことだろうと皆は推測する。
 事務所に戻った弥子は、ネウロに笹塚の不明な行動について問いかける。すると、ネウロは連鎖的に推理を紡いでいく。
 笹塚家族の事件は他の「Ⅹ」の事件と違う点がある。それは「木の箱」だということ。「Ⅹ」は死体を観察するために透明な箱に入れる。「Ⅹ」には木の箱に入れる動機がないのだ。シックスはこれまでの犯行声明で、自分の力を誇示するために、自分の名前「6」を示してきた。箱は6面体。つまり、笹塚の家族を殺した真犯人はシックスである可能性がある。ではなぜ、シックスに笹塚の家族を殺す必要があるのか。当時ジャーナリストをしていた笹塚の父親は、拉致事件を追ううちに人体実験の秘密を突き止めてしまう。そのためシックスに消されてしまった。これが真相。
 ネウロの推理で、笹塚の事件、「Ⅹ」、血族、それらが一本の糸でつながった。しかもこの推理を、釣りのときに笹塚に話したとネウロは言う。それならシックスへ復讐しに行くのではと不安になる弥子だが、冷静沈着な笹塚なら心配ないと油断してしまう。ところが、もはや笹塚は行動を起こしていたのだった。

 時を同じくして、葛西はビルに放火し「六」の炎文字を描いていた。ネウロも放火現場へと足を運ぶ。その頃弥子は吾代の病室へ行き、事件の真相について報告していた。それを聞いた吾代は、笹塚の危険な性格ならば必ず復讐に向かうはずだと、弥子と共に急いで現場へと向かう。
 すでに笹塚はシックスを待ち伏せし、長年かけた暗殺計画を実行しようとしていた。暴走した笹塚はシックスと対峙するが、後輩刑事に化けた「ⅩⅠ」によって刺され致命傷を負う。しかも、この報復攻撃もシックスが仕向けたものだと聞かされる。人の記憶が読める「ⅩⅠ」に脳を観察されたのち、駆けつけた弥子に笑顔を見せた直後、笹塚はシックスに射殺された。
 
 葬式の後、弥子は本城に会いにいく。確信の持てない面持ちで、本城のこれまでの不可解な言動について問うと、本城は思いもかけない真実を自白する。 
 本城はシックスの熱心な信奉者だった。笹塚を罠にかけて復讐に走らせたこと、弥子たちを森に誘い込んだこと、すべてシックスの指示だった。さらなる衝撃は、脳が壊れると承知の上で刹那を実験体としてシックスに差し出していたのだ。本性を現した本城は橋の欄干の上で発狂し叫ぶ。が、直後、自ら毒を注射し川に落ちて死亡した。髪の毛を掻き乱し絶叫する弥子。
 同時刻、放火しようとした葛西は、笛吹たち警察に追い詰められていた。だが、炎が回り爆発したビルの倒壊に巻き込まれる。

 ほどなく弥子は事務所に来ていた。目の前で続けざまに大切な人が死に、失意の底で押しつぶされそうになっていた弥子は、「探偵のまね事なんかやっていなければ、こんな悲しい思いをすることもなかった」「最初から出会わなければよかった、みんなにも、あんたにも」と、ネウロに対して投げやりに吐き捨てた。その言葉はネウロを失望させてしまう。軽蔑をこめた丁寧なお辞儀でネウロは弥子を追い出した。
 落ち込んだ弥子の元へ刑務所を脱獄したアヤが会いに来る。弥子は逃げ出してしまったこと、ネウロを怒らせてしまったことなどを打ち明ける。それに対してアヤは「出会いは必ず何かを残す」とアドバイス。笹塚が笑顔を残したように。「きっと本城も何かを残したはず」と言うアヤの言葉を聞いた弥子には思い当たる節がある。
 本城の残したもの、それは、弥子への謝罪の手紙とシックスのアジトを示した地図だった。
 
 本城の気持ちに応えるため、そして心配してくれた仲間への感謝を胸に、どんなに怖ろしい虐待が待っていようと、ネウロの元へ帰ろうと決意し事務所へと向かった。厳しい表情で応じるネウロに戻りたいと懇願すると、ネウロは軽いビンタ一発で弥子を許した。二人は笑顔で和解。
 その頃、ひと仕事終えたシックスは逃走準備をしていた。だが、もはや緊急特別手配者となった今、シックスの乗る車は警察に見つかり取り囲まれる。





 笹塚が後輩刑事に刺されたときに差し込まれた1巻の一コマ。「おまえ後々犯人とかならねーよな」まさか、ここで持ってくるとは。最初からこの場面を想定して用意してあったのなら、ものすごい長い伏線です。違うとしても、再利用の巧妙さ。
 それと笹塚が死の間際に微笑を見せる演出も泣かせます。この一瞬のために、作者が1巻からそれまで一度も笑った顔を書いていなかったというのが思惑だとしたら、これもすごい伏線。
 それにしても、ネウロは肝心なときに弥子に魔界虫を付け忘れるんですね。そもそも弥子を監視してピンチを救うために虫が付いているんじゃなかったのか。まぁ死んだのは笹塚のほう。弥子が危機になっていないから、虫はネウロに報告しなかったのでしょうか。
 
 弥子の「あんたにはわからない」。これはHAL編でも言いました。でも今回は違う。ネウロは人間を理解しようと試みるのです。
 アヤは歌声で人の脳を揺らし癒す能力がある。ネウロはアヤの歌を聴けば弥子の心を理解できるのではと考えて刑務所に行きます。結局魔人の脳には効果がなく諦めて帰るのですが、これは変化のしるし。
 笹塚の葬式でもわずかながら人間の死に喪失感を覚えてます。人間を虫けら扱いしていたネウロに仲間意識が芽生えてきた証拠です。
 また、探偵の役をやらされていただけの弥子が、ネウロも気づけなかった本城の素顔を見抜いたのは、優れた洞察力から。吾代がネウロに「弥子抜きで行動するのは無理」と言うように、ネウロには弥子が必要不可欠。なのにやっぱり奴隷扱い。どこまでもドSな男です。
 
 でも残念なのは、軽いビンタをされたときの弥子の顔。いつものように目が飛び出てぐへって言いましたから。やっぱりこれギャグ漫画だったかと思いましたよ。それまでのシリアスムードが台無しです。蚊をはたく程度の力のつもりがああなったのでしょうか。
 そして、本城の正体にヒントが置いてあったにも関わらず気づかなかった私はアホです。刹那との回想でも、シックスの髪の毛らしきものが見切れてるとは思いつつも、この展開は想像できませんでした。シックスが刹那を病気にし、本城はそれを恨みシックスに復讐しようとしている。そう予想していましたが違いました。本城の言う殺したいほど憎む相手とは、自分のことだったのです。
 笹塚の事件、Ⅹ、HAL、血族、すべてが繋がった糸はシックスの元へと向かっていたとは。
 
 21巻での伏線のヒントは葛西の「ただの人間」です。終盤にきて伏線の回収が一気にきましたね。1~2巻のころは、ここまで大仕掛けな世界観の漫画だとは想像もできませんでした。
さあ、いよいよクライマックスへ。



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