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魔人探偵脳噛ネウロ9~11巻 あらすじ&感想

kage

2012/09/24 (Mon)

 電人HALを追ってネットの世界へと潜り込んだネウロだが、3体の援護プログラム『スフィンクス』に攻撃され押し戻された。しかしネウロは諦めない。それほどの大容量のデータを送り込ませるにはスーパーコンピューターが必要。国内のスパコンは数が少なく場所も限られているので、HALにコントロールされているスパコンを探し出して壊せばいい、というのがネウロの見解。
 そして、まず二つのスパコンを見つけ出し破壊に成功した。そこでHALから言われた「まるで無力な操り人形」の言葉に弥子は傷つく。私が行かなくてもネウロ一人で敵を倒すことはできる。私はいる意味が無いと……。
 同じ頃、元ハッカーの刑事篚口結也は、電子ドラッグに対抗する特効薬のプログラムの制作を完了させていた。
 中毒患者たちが電子ドラッグにアクセスすると、そのページをハッキングしワクチンを脳へ刷り込み元通りにする手はずだった。ところがそのすべてをHALは計算済み。中毒患者たちはワクチンの反転映像を見せられても、もう一度反転して受け入れるようにプログラムされていた。篚口の特効薬作戦は失敗し、逆に篚口が電子ドラッグ映像を見せられ、HALに支配されてしまった。
 ネウロたちが3つ目のスパコンが置かれた場所へ行くと、そこで待ち受けていたのは篚口。篚口はスパコンをトレーラーに乗せ、山奥へと逃げる。後を追うネウロだが、これは篚口の巧妙な罠。ネウロは車ごと谷底へ落ちてしまう。弥子の救出を優先したネウロはかなりのダメージを負い絶体絶命のピンチ。
 ドラッグに冒された篚口は、狂乱しネウロを殺そうとむきになっている。しかし弥子は見抜いていた。篚口が操られていないことを。洗脳されている人間は罪の意識が無い。でも篚口には罪悪感があるからだと。
 弥子のお陰で冷静になれた篚口。ネウロが3つ目のスパコンを破壊したが、時はすでに遅し。HALは次なる手段を用意していた。
 HALは東京湾に入港した原子力空母を乗っ取り支配していた。さらに政府に世界中のスパコンを空母に運び込ませるように要求した。
 急いでネウロが再びネットの世界へ侵入するも、直前にHALは新しいスフィンクスをインストールさせていた。しかもHALのいる奥へは「パスワード入力」の壁があり、到達できない。
 そのとき、ネウロが血を吐き倒れた。謎を食えず空腹の上に、これまでに受けた傷のダメージと魔力の大量使用で体力の限界に来ていたのだ。
 ネウロは弥子に指令を出す。自然治癒で回復するまでの3日間で、弥子がパスワードを解読しろと。重要なパスワードほど制作者の感情に沿って設定される。だが魔人のネウロには人間の心情は読み取れない。そのため弥子がパスワードを解くしかないのだ。一度でも間違えれば原子力空母が破壊され、首都圏は放射能の海になる。HALはヒントを与えた。パスワードは私の目的そのものだと。
 弥子にできてネウロにできないこと。それは人間の心を深く知ること。弥子はネウロの期待に応えるため、世界を救うため、私がやるしかないと決意しパスワード解読のための資料集めに走る。

 一方、ネウロは早坂兄弟にある物を調達させ、空母に乗り込む準備をしていた。
 弥子は、たくさんの資料の中にある春川教授の講義映像から、何かを感じ取りひとつの推測を浮上させる。そして3日目の朝、これまでに掴んだヒントからある一つの答えを導き出した。
 早坂の用意した軍用ヘリで空母に乗り込むネウロと弥子。さっそくネウロがネットの世界へと潜り込みHALと向かい合う。同時に弥子はパスワードを入力。解読は成功したのだ。
 ネウロとHALを隔てていた壁は取り除かれ、ネウロは大量で良質の謎を喰った。狂喜して兵隊たちを倒し暴れまわる片方で、すべてを封印され動きを止められたHALが現れ弥子に問う。どうやってパスワードを解読したのかと。弥子は語る。空母を乗っ取り世界中のスパコンを手に入れ電子ドラッグで兵隊を洗脳し、そこまでしてやり遂げたいHALの目的とは何かを。 ――それは「ある人物を0から作り出すこと」
 HALは春川の過去を語り始めた。
 
 数年前、春川は脳に難病を抱えた患者の治療施設に勤めていた。被験者本城刹那は、脳のコントロールを失い脳細胞が破壊される前例の無い病に侵されていた。春川は彼女の治療に全霊を尽くしていたが、その甲斐もなく彼女は息を引き取った。
 絶望した春川はデジタル世界で刹那を構築させる研究に情熱を注いだ。しかし、何年かかっても何度計算を繰り返してもとても足りない。生身の人間である春川が生きている内には成し遂げられない。そう悟ったからHALは春川を殺したのだと。HALでさえ世界中のスパコンで何百年も計算し続けても刹那を再構築するのは未知数だ。
 だがネウロに破壊された今となればHALの計画も続行不可能。外部の人間が消去するしかない。その役目を弥子にやれと命じる。HALは電子ドラッグのワクチンと消去画面を弥子に見せる。HALの苦しみが理解でき同情する弥子は一度は拒否するも、震えながらエンターキーを押すと、HALは少しずつ消え0に近づいていく。その時、HALが見たものは……。
 大切な人を失う辛さが痛いほどわかる弥子は、涙が止まらない。そこへ機嫌よく現れるネウロ。弥子の活躍を称え「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」というネウロの手を払いのけ、「あんたにはわからない」と弥子は声を張り上げる。ネウロは気にすることもなく、「日付も変わった。帰るぞ」とひと言。嵐のような数週間は終わった。
 
 1週間後、日常が戻った弥子とネウロは、中毒者に襲われ壊された事務所の家具を買いに出かける。するとまた事件が…。ネウロが謎を解き、新しい家具も手に入れ、すべてが新しくまわり始めたと思われたが、その裏である人物も動き始めていた。
 一方では、軍事ヘリ代の借金返済のための、弥子のアルバイト大作戦開始です!





 HALが消去されたときの弥子とネウロの温度差。「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」の台詞は1話の父親の葬式のときにも言っています。まったく空気の読めない男です。魔人ゆえの無神経さとでも言いましょうか。ネウロは謎が喰えさえすれば人の感情などどうでもいいですから。感情がわからないと言いつつも、弥子に嫌味を言ったり嫌がらせをしたりするのは、人の心を理解しているからこそだと思いますが、そこはツッコミません。
 ネウロは常時、事件の動機には関わろうとせず謎解きを進めていきます。二時間ドラマで例えるなら、断崖絶壁で犯人が動機を話し出す一番のクライマックス場面だとしても、興味もなく無関心な顔をしています。二つ目のスフィンクスを壊しに行った時も同じでした。だからHALの動機を探るなどお手上げで弥子に任せた。合理的でもあり結果的に成功だったわけです。ネウロに男女の愛情なんて理解不可能でしょう。
 しかしながら、ネウロの「日付が変わった」の言葉の意味は、弥子の進化を認めた証。前回の噛み切り美容師のときに言った言葉はここで活かされます。弥子の成長を日付に例え表現しています。背景にある12時少し前の時計が12時ちょうどになり、とうとう日付が変わる。ネウロは伏線だらけと言われる内の、これもひとつ。
 名簿の中にある本城刹那の名前や友人の会話からでたヒント。「ネウロ」は推理漫画にお決まりな読者に推理させるという狙いは全くない漫画ですので、そこからパスワードは想像できませんでした。
それと、小ギャグの一つと思われた、5巻でネウロが蓄財しているダイヤ。早坂兄弟にヘリを用意させる代金代わりに使うなんて。また弥子が警察で笛吹宛に置いていった手紙。その内容は後で明らかになりますが、彼らの行動の一つ一つに意味があり、のちに再利用する作者の細かな基盤つくりは見事としか言いようがありません。
 HAL編後半からのテンポのよさはハラハラしながら一気に読めてよかったです。これがブリーチならHAL編だけで4年は掛けたでしょう。

 あと、春川と刹那の回想で出てきた「本城博士の娘か」「悪意の塊のような病気」「人為的なもの」これらの台詞は伏線です。読み進めていき気がついたときは衝撃的でした。はじめは刹那とⅩは同じ病気だと思っていた私です。あるいは黒幕はⅩだろうと。まさか読者のミスリードを誘うのも作者さんの狙いだったとか?
 10巻での印象的な台詞はこれです。HALが繰り返しつぶやく「違う(ノット)消去(デリート)再試行(リトライ)」これは、刹那との事情を知ってしまってから再び読むと切なくなります。
 また「何度退けても向かってくる。人間とは比べようもなくタフで知能的。人間には通じる脅しも君には通用しない。決して諦めない執念」うまく的中させたネウロへの褒め言葉です。まさにネウロとはこんな奴。HALでさえ敬服してしまうほどですから。
 もう一つ、感心するのは作者さんの家具のデザインのセンスのよさです。魔界能力のデザインも独特で凝っているとは思いましたが、特にテーブルや椅子は商品化して欲しいほどの美しさ。そのかわり人物に関しては、弥子が6頭身だったり8頭身だったり、ネウロとの身長差がまちまちだったり、ありえない関節の曲がり具合だったり、おや?と思う点はございますが、それは作者さんの個性として受け取ります。
 最後に登場した葛西。なにやら意味深なことを言っていますが、これも読者を翻弄する作戦かも…?

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