魔人探偵脳噛ネウロ1~5巻 あらすじ&感想

 父親を殺されてしまった女子高生桂木弥子。悲しみに暮れる弥子の前に、突然魔界からやってきた魔人脳噛ネウロが現れる。ネウロは魔界の「謎」を喰い尽した末、脳髄の空腹を満たすために地上に現れたのだという。ネウロの言う「謎を喰う」とは、犯罪者がトリックを暴かれた時点で敗北感を感じれば、その人間から「謎」が放出される、そのエネルギーを喰うことらしい。
 ネウロは謎を食う、つまり事件を解決するにあたり、魔人として目立つのを避けるため、弥子を探偵役に仕立て、自分は助手に徹し、数々の難事件を解決していく。
 強制的に探偵をやらされていた弥子だが、父親の事件を解決してくれた恩義や、多くの人と出会えることの興味から、探偵コンビを続けていく決意をする。
 父親の事件を捜査をしていた笹塚刑事。低いテンションと高い実力と言われる無表情の彼だが、事件現場に必ず現れる弥子を気遣い、その後も良き協力者となる。10年前に家族を何者かに殺された過去を持ち、この事件が彼の人生を大きく狂わす事になる。
 
 やがてネウロはまず手始めに怪しげな金融会社を乗っ取り「桂木弥子魔界探偵事務所」を設立する。金融会社の社員だった吾代を雑用係(奴隷)として雇う。
 探偵事務所設立後、第一号の依頼者は、世界的カリスマ歌手アヤ・エイジヤ。アヤは自分の周りで立て続けに起きた不審死に疑念を持ち、事務所を訪れたのだという。しかし、この不審死はアヤが起こした殺人事件だった。事件解決現場をテレビで放映されたことにより、弥子の知名度は全国的なものとなった。だが、これはより多くの謎が弥子の元に集まるためのネウロの計算。人間の知能をはるかに超えるネウロは謎解きだけでなく、先を読み用意周到に準備している。だが人間と同様の感情を持たないため、細かな心理分析は苦手としていた。心の内側を探る役目として、弥子を側に置いているとネウロは言う。
 次なる事件現場で二人は「Ⅹ(サイ)」と呼ばれる殺人鬼と遭遇する。「Ⅹ」は殺した人間を箱に詰め加工し、自分の細胞を自在に変異させ、他人に「成る」ことができる特殊能力を持つ人間。「Ⅹ」は弥子に強烈な脅威を与え、しばらく身を潜めるのだった。
 その後、弥子とネウロが行った温泉旅行で、春川教授という人物と出会う。のちにこの春川は世間を騒がす大事件に関わる重要人物となる。
 旅館での殺人事件を解決後、旅行から帰ると、留守番していた吾代がユキと名乗る男に襲われ倒れていた。後日ネウロと弥子がユキに呼び出された場所へ行くと、調査機関の社長、望月が現れ、知名度のある弥子を会社の広告塔として雇いたいという。怪しい雰囲気に断ろうとする弥子だが、ネウロは謎も無いのにあっさり引き受けると言う。
 望月と早坂兄弟(ユキ)が弥子たちを雇った本当の理由は、麻薬取引の罪を弥子たちに着せ、警察が踏み込んでいる間、自分たちは別の裏取引で武器を密輸しようと企んでいたのだ。しかし、ネウロに暴かれ失敗。早坂兄弟はネウロの驚異的な力を見せ付けられる。ネウロが謎も無いのに望月の依頼を引き受けた理由は、望月の調査会社を支配し、謎の多そうな事件をネウロの元へと運ばせるためだった。
 そして、実は早坂たちの取引の相手というのが、のちに起こる驚愕の大事件に関係していたと知るのは、しばらく後の話である。





「ネウロ」の感想や大まかなあらすじを書くのは他の方もされているので、全巻すべてのあらすじを書いてみることにしました。とは言っても独断で省いている箇所もあります。ネタバレ注意。

すでに5巻までで、伏線が張りめぐらされています。見つけた伏線はここ。
 あかねちゃん
 春川教授
 笹塚刑事
 ネウロの弱体化
 3巻のネウロの台詞

 あかねちゃんとは、事務所の壁に埋め込まれた死体の髪の毛。ネウロの魔力で髪の毛だけ生き返ったという、もう何でもアリな設定。このあかねちゃん、秘書として大活躍なんだけど、結局最終回まで、謎は解いてもらえず仕舞い。伏線未回収のまま放置?と思われたのだけど、これも作者の構想のうち。最終回でネウロが魔界から帰ってくる理由付けのためにあえて残してあるんですね。まだ解いてない謎がある、とはあかねちゃんのこと。
春川教授が温泉で言う
「近いうちに君たちは春川英輔の名前を顔を見るかもしれん。偉大な研究を成就させた男として」
と言う台詞。これはこの後起きる「電人HAL」のことを指しているかと思いきや、最終巻の救助システムのことだったんですね。(弥子はHALのことだと言っているけど)この時点で春川はHALの暴走計画は知りませんから。だとしたらなんて長ーーい伏線。
 笹塚刑事がヒストリア事件で見せた天才的な射撃の腕前。同僚の刑事が言います。あの腕前は警察学校で習うレベルじゃない。笹塚は家族が殺されてから一年間、姿を消していた。その間何をしていたかは誰も知らない、と。
はい、ここ伏線です。20巻で笹塚の正体が明らかになるまで、読者も弥子も疑いもしなかった笹塚の本性を、ここでほのめかしていたのですね。これもまた長い伏線。本当に天才的だと思う。この作者さん。怖ろしく練りこまれた構成力。
 そして、笹塚も周りの人たちも、笹塚の家族を殺したのは「Ⅹ」だと決め付けています。しかし「昔のⅩの手口は今より荒々しいものだった」という台詞があります。これもまたさり気なく伏線が張ってあります。読者も思い込んでいたⅩが犯人説をひっくり返すひと言だったのに、細かすぎて気づかない。(というか、私だけか? わかりやすい伏線に気がついてないのは。) 
 後半になって伏線回収されて初めて気づく、「ここはそういう意味だったのか」「この台詞はここで活かされるのか」と判明したときの驚き。ネウロファンが絶賛するのは、そういう何年もかけたロングパスの伏線と完成度だと思うんだよね。
 そして、ネウロの弱体化も早い段階で明らかにされています。1巻で弾丸をまばたきで受け止めたり、核弾頭でも殺せないと言ったり、ネウロは不死身だと読者に思わせておきながら、実は、温泉で弥子を守るため弾丸を指で弾いたときの出血がすぐに治らなかったり、早坂が撃ってきたマシンガンの弾が、数日後に体から出てきて血だらけになったり、ネウロが不死身ではないことを暗示しています。人間界では加速的に弱体化することは7巻でネウロ自身がⅩに告げることで読者も知るのですが、こんなに早い段階で主人公の弱みを言っちゃっていいの?最強の敵に、ネウロは勝てるの?という不安要素になるのですね。読者をはらはらさせる持って行き方がうまい。
 それから、3巻でネウロの言った
「資質と欲望が人間をどこまでも進化させる。その進化が魔界には無い多種多様な謎を生むのだ。いずれ貴様はより多くの人間を理解するよう進化するだろう。たとえそれが貴様が理解できないという、あのⅩでもだ」
という台詞。Ⅹへの恐怖で探偵を続けることに怖気づいた弥子に言うのですが、このときのこの言葉が、最終戦で現実になり、弥子も最終巻で言葉の意味を深く知ることとなるのです。

 ネウロの虐待や言葉攻めもギャグとして単純に笑えるし、弥子の成長やネウロに芽生えた人間への興味が、少しずつ描かれていくのも、好感をもって見ることができます。
 ネウロのドSも弥子と吾代限定らしく、よそ様には好青年風に振舞っている。弥子へのドSは仲間意識の表われ……という意味ですかね。いや単に所有物として遊んでいるだけでしょう。でも悪意は感じられない。「好きだからいじめたくなる」的心理かもしれない(違うな)。このあたりから、少しずつ二人の距離が縮まった感じもある。
 まだ、5巻までなのに、長々と書いてしまった。つぎへ続く。





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Re: Kさま

ですよね。私も自分で書いていながら後で読み返すと、やっぱ違うな~と思ったので、次の完結編でその辺を書き足すつもりでいました。
ご指摘通り、弥子が推理した、「HALを完成させ公表しようとしていた」であっていると思います。
結果的に主人公を助けた「偉大な研究」に、たまたまそうなっただけのことです。
それにしても、この長ったらしい文章を読んでくださる人がおられたとは。嬉しいです。ありがとうございます。けっこう大変なんです。あらすじを書くのって。

春川が言った「偉大な研究」は電人HALで間違いないと思います。
数年かけて作った電人HALをさしおいて、片手間で完成させた救助システムを春川が「偉大な研究」と評するとは思えないので。
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