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中村航『100回泣くこと』

kage

2012/01/21 (Sat)

100回泣くこと

価格:1,365円
(2012/2/12 12:41時点)
感想(5件)




タイトルと中盤の「こんな生活が続けばいいと思った」の文で、結末が分かってしまいました。『世界の中心で愛をさけぶ」に似た内容なのかな、と。
予想通りの話しではありました。でも飽きずに最後まで読めました。

まず、危篤の飼い犬の説明からのスタート。拾ってきたいきさつなど。さらに犬に会いに帰省するため、使っていないバイクを手入れする話しが淡々と書かれていて、バイクの部品の説明なんか私には見当がつかない分野だけど、飽きずにすらすら読めました。
それは、さらりとした文体。リズムのある体言止めやくり返し。さりげない言い回しや小道具の使い方がとても巧みだったせいでしょう。こんな小説が書ける人はロマンチックで澄んだ感性の人なんだろうなぁと、才能がうらやましくなりました。
彼女との同棲生活はかわいらしく、ほのぼのとした雰囲気がすんなりと伝わってきました。
ユニークな彼女との何気ない会話や、ままごとみたいな生活の、普通っぽくて現実味のある、繊細な毎日。
『なんでもないようなことが~、幸せだったとおもう~』とBGMが聞こえてきそう。

二人のほんわかした同棲生活が描かれたあたりでは、この主人公に惚れてしまいそうなほど、優しく穏やかな彼で、こんな人と結婚したら毎日がのんびり暮らしていけるだろうに、と想像してしまったほどです。
しかし、ほんわかはそこまで。彼女が病気になり、またそれがガンだと知った後の彼=主人公の感情の変化が見事に描かれています。
彼女がつらい治療に耐えていた時間、自分は普通に仕事をしてご飯を食べていたことに対して自分を責め、彼女のために出来る事を考えるが、でも何もしてやれない無力感がやがて怒りになり、会社の同僚や仕事そのものにまで腹立たしく思うようになり、爆発しそうになるのを必死で耐え、トイレに隠れて声に出して泣いてみたり。
彼女が死んでからしばらくは、お酒を飲んでは泣き自分を責め後悔し、彼女を思い出してはまた泣き、を繰り返す。彼女のいない部屋で取り残された彼女の荷物を見て襲われる喪失感。
でも時間が経つにつれ少しずつ彼女のいない生活を取り戻していく。
そんな、感情の起伏や揺れの表現が素晴らしくて、ぐるぐる回る主人公の感情変化に同調してしまった。

作品の中で書かれている「思考の連鎖」という考え方は興味深かった。
つまり、今自分が思い浮かべた意識や光景は、もっと大昔に同じ事を考えた人の思いを継いでいる。
『彼女が僕に残してくれた、生命の連鎖を象徴する像だった』
自分がイメージするものを与えてくれたのは彼女だ。彼女と話しをしながら思い浮かべた思念が自分の中にあることで、彼女が心の中に残り続ける。
そういった意味かな。私の読み取りが間違っていなければ。

久しぶりに私をセンチメンタルにさせてくれた本でした。






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