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『朔夜にふたり』

kage

2008/08/04 (Mon)

犬夜叉 二次創作小説

あたしのベッドで寝ているあいつ。
今日は朔の日だったんだ。
緋色の衣に黒髪の少年が、すやすやと寝息を立てて眠っている。こんなに無防備な寝顔を人にみせるなんて。明日は苦手な数学のテストなのに、気が散って勉強に集中できないじゃない。

さっきふいにこっち(現代)にやって来たかと思うと、
「闘いが終るまで、お前はこっちにいろ」とあいつは言った。
あたしを心配して言ってくれているのは分かっている。
でもあたしは決めたんだ。ずっとそばにいると。
「それなら命を懸けてお前を守る」
そんな真剣な眼差しで見つめられたら、あたし……。

いつも思っていた。あたしを抱きしめるときは、こんな風に桔梗も抱くのかな、とか、あたしを見つめるときは、桔梗と重ねているのかな、とか……。
でも金色の真っ直ぐな眼差しは、あたししか映っていなかった。
信じていいの? 今のあいつを。

刀を抱えて丸くなって眠る姿は子供みたい。
あいつは、朔の日には眠ったことがないと言った。爪も牙も無ければ自分すら守れない。武器も使えない。不安に押しつぶされそうになりながら、朝を待つのだろうな。
せめて今日だけは安心して眠ってもらいたい。

あたしが三日もこっちに帰っていると、心配してすぐに迎えに来るあいつ。怒ってやって来るけれど、会いたくてたまらないから、毎日井戸を覗いているって、七宝ちゃんが言ってたっけ。
あたしも会いたいよ。こっちにいてもあいつのことばかり考える。ずっとそばにいると決めたから。この闘いが終れば、あたしたちはそれぞれの時代へ戻るのだろうか。本来いるべき場所に……。

数式が頭に入らない。鉛筆を置いて立ち上がると、部屋の窓を開けた。
月の出ない夜。戦国の空に、あんなにたくさんあった星たちは、どこに行ったのだろう。東京の空は明るすぎる。
あいつは幾つもの眠れない夜を過ごしたんだろうな。満天の星を見上げながら。

「どうした、かごめ。てすとべんきょーはいいのか」
耳元で聞こえるあいつの声。黒い瞳、黒い髪のときは、いつもより幼く見える。
闘いの中で生きるあいつは、母を亡くして父の顔も覚えていない、悲しい少年なのだ。
あたしには桔梗ほどの霊力も、弓矢の腕もないけれど、守りたい。
犬夜叉を。

――あたしは犬夜叉とめぐり会う為に生まれた。五百年の時を越えて――


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