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対話体小説 『熱伝導率の高い女たち』

kage

2009/08/24 (Mon)

 競作参加作品  テーマ『夏』 お題『肝試し』



「ごぶさたしておりますわ。奥さま」
「ええ。お久しぶり。うちの主人が出張だと嘘をついて、あなたのマンションに泊まっていたのを目撃した日以来だから、2か月ぶりかしら?」
「まぁ、そんなこともありましたわね」
「その節は主人がお世話になりましたわ。(すました顔して何よ! 泥棒ねこのくせに)」
「いいえ、どういたしまして。毎度のことですから。それにしても、奥さまのスーツ、素敵ですこと。ディオールの新作ですわね」
「よくご存知ね」
「ええ、私も買おうと思ったのですけど、おばさんしか似合わないデザインだから、やめたんですの」
「確かに、スタイルの悪いガキには、着こなしは無理ね」
「今日の奥さまは、メイクもヘアスタイルもばっちり決めていらっしゃいますものね。ずいぶんと気合の入ったこと」
「あら、そうかしら。普段通りよ」
「メイクに時間とお金をかけないといけないなんて、大変ですわね~。年を取ると」
「(何言ってんのよ! あんただってアラサーじゃないの!)いいわね~、若い子は。安っぽい服を着ても似合うから」
「マーくんもきみの若さがいいって言ってくれるわ」
「あら、それは良かったわね。(ふん! ばかじゃない! あんたから若さを取ったら何が残るのよ!頭悪い女ね)その、さらさらヘアーも羨ましいわ~。まっすぐにセットするのも大変なのよね」
「ストレートパーマですから」
「ええ。知ってるわ」
「……ところで、何ですの? 奥さま。急にこんな人目につく喫茶店に呼び出して」
「呼び出された理由も分からないのかしら。可哀そうね(おばかで)。すいぶんと鈍いこと」
「さあ。何のことでしょう?」
「あなたには、はっきり言ったほうがよさそうね。いいかげんにうちの主人と別れてもらえないかしら?」
「だって~。マーくんのほうが別れたくないって言っているのよ、ご主人に聞いてごらんなさいよ」
「主人は優しいから、あなたに何も言えないのよ」
「そうかしら。奥さまを怖がっているんじゃなくて?」
「えっ? なあに? 主人がそう言っているの?」
「ええ、いつも妻がガミガミうるさくて嫌になるよ。お前が一番だよ~って甘えてくるから、膝枕してあげているのよ」
「(あのバカ亭主! いい年して恥ずかしくないのかしら!)……ほら、主人の出世に響いてもよくないでしょ?」
「あら、やだ。ヤキモチかと思えば、それが心配?」
「あなたは愛人だから分からないのよ。妻は夫の仕事にも気を遣うものなのよ」
「私にはご主人の出世のことしか考えていない、強欲な妻に見えるわ」
「そんなことないわよ。わたくしたちは愛し合っているもの。あなたが現れるずっと前からね。この銀のブレスレットも、主人のプレゼントなのよ。シンガポールに出張した時に買って来てくれたんだから。この緑の石、珍しいんですって」
「やだっ! ちょっと! それ私も持ってる! マーくんがくれたのよ! ほらこれ!」
「何ですって! 緑と青の石の部分が違うだけじゃないの!」
「どういうこと? 奥さまと色違いのお揃い?」
「一点ものだって言ったわよ。あの人が特別に作らせたって!」
「私にもそう言ったもの。ひどい、マーくん!」
「いったい、どういうつもりかしら? 妻と愛人に同じものをプレゼントするだなんて! ……ちょっと、あんた、聞いてるの? どこ見てるのよ!」
「……奥さま、窓の外、見て」
「窓の外って、どこよ」
「ほらあれ! 前の歩道を歩いて向こうからやってくるカップル!」
「やだわ! あれ、うちの主人じゃない! 隣の女と腕組んじゃって!」
「どう見ても、十代よね、あの女」
「ちょっと! あの女の腕見て! ほら、左手のブレスレット!」
「何よ! あれ、私たちのと同じじゃない! あっちは赤よ! 赤!」
「いったい、何個配ってんのよ! あの男!」
「許せないわ! マーくん! とっちめてやらないと気が済まない!」
「奇遇ね。わたくしも今、そう思っていたところよ」
「今すぐここへ呼びましょうよ」
「いいわね、そうしましょう。あの女も一緒にね」
「話が合いますわね。奥さまとは前から気が合うと思っていたのよ」
「いい? それじゃあ、電話するわね。……もしもし、あなた? 今どこにいるの? へー、仕事中なの。とぼけても無駄よ。お見通しなんだから。今すぐ来てちょうだい。駅前ビル一階の喫茶店。お連れの人も一緒にね。何をするかですって? 決まっているじゃない」


「肝試しよ」





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最も熱伝導率の高い金属は、銀だそうです。
それで、銀のアクセサリーを小道具として使ってみました。
すぐに熱くなるのは、女か銀か、どちらが早いのでしょうね。

どこが肝試しなんだ、と思った人。
あなたは本当の女の怖さを知らない人です。
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