2017 09 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. »  2017 11

児童文学 『かんちゃんとのやくそく』

kage

2009/05/05 (Tue)

競作参加作品 テーマ『春』 お題『入学式』

 ぼくの友だち かんちゃんは、かっこいい車にのっているんだ。
 ようちえんのみんなとおさんぽに行くときも、おへやであそぶときも、いつもその車にのっているんだよ。
 かんちゃんせんようなんだって。ほかの子はのっちゃだめなんだ。
 かんちゃんは うんてんがとてもじょうずなんだよ。
 ろうかをまがることも、バックもできる。すごいよね。

 ぼくはかんちゃんとなかよしなんだよ。ようちえんでいつもいっしょなんだ。
 絵本をよんだり、おりがみをしたり、たんぽぽ組でかっているカメにえさをあげたりしてあそんでいるよ。
 かんちゃんはとっても ものしりなんだ。
 ポケモンのしんかけいや 虫のかい方や きょうりゅうのしゅるいをたくさんしっている。やっぱりすごいよね。
 ぼくは今日もかんちゃんのとなりで、いろんなお話しをしながら、きょうりゅうの絵をかくんだ。
 ほかの男の子たちは木のぼりしたり、おいかけっこしたりして、お外であそんでいるけれど、ぼくはおへやであそぶのがすきなんだ。
 でも先生は
「男の子はお外で元気にあそびなさい」
 って言うの。
 なんでかなぁ。ぼく元気におえかきしているよ。

 かんちゃんの足は ほかのみんなより細くて小さい。だからいつも『かんちゃん号』にのっておさんぽに行くんだ。
 がたがた道は先生もおしにくいから、ぼくがてつだってあげるんだ。
 よいしょ、こらしょ、ってうしろからおすんだよ。
 するとかんちゃんが、えへへってわらった。
 先生が「よかったわね。大すきなゆうくんにおしてもらって」
 と言うから、ぼくも うふふってわらった。ちょっぴりてれくさかったから。

 ぼくはかんちゃんとテラスにすわって、おにわであそぶお友だちを見ている。
 てっちゃんやこうくんは、木のぼりやおにごっこをしてあそぶのがすきみたい。
 ぼくは木のぼりができないし、走るのがおそいから、みんなはぼくをさそってくれないんだもの。
 ぼくはこうしてかんちゃんと二人で、みんながお外であそんでいるのを見ているだけでいいんだ。

 ある日、てっちゃんがぼくらのところにきて言った。
「ゆうくん、いっしょに木のぼりしようよ」
 うーん。でも、ぼくやったことないし、できないよ。
「だいじょうぶだよ。いちばん下の木のえだに足をかけるんだよ」
 できるかなぁ。やってみようかなぁ。
 さくらの木の下に行こうとしてふりかえると、かんちゃんがわらっていた。
「いいよ。行ってきて。ぼくここで見ているから」
 ぼくはちょっとかんちゃんにわるい気がしたけど、はじめて てっちゃんがさそってくれたんだもん。木のぼりしてみたかったんだもん。
 ぼくは大きなさくらの木に、しがみついてみた。
 太いえだまで 手がとどかないし、足もとどかない。
 がんばって上に行こうとしたら、てっちゃんとこうくんが、おしりをおしてくれたんだ。
 やったよ! 見て見てかんちゃん! いちばん下のえだまでのぼれたよ.
 テラスでかんちゃんがぼくを見てわらっている。ぱちぱちと手をたたいている。
 木のぼりできたのはうれしかったけど、ほんとは はんぶんくらいさみしかった。
 ぼくはやっぱりかんちゃんといっしょに、おえかきしたりポケモンのお話しをしているほうがたのしいよ。
 ぼくはかんちゃんのいちばんのなかよしなんだもの。

 それからもぼくはときどき、てっちゃんとすなばでトンネルをつくったり雪だるまをつくったりしたけれど、テラスでぼくを見ているかんちゃんと目をあわせて、うふふってわらいあうんだ。いっしょにあそんでいる気分になるから。


 そつえんしきの日、先生が言った。
「かんちゃんは四月からようご学校へいくので、みんなとおなじ小学校へは通えません。かんちゃん。 ようご学校へ行っても、おべんきょうやリハビリがんばってね」

 おなじ小学校へ行けないなんて、さみしいな。
 もういっしょにおえかきやおりがみできないのかなぁ。

 かえるとき、かんちゃんがおにわのさくらの木の下でぼくに言ったんだ。
「いつかいっしょに木のぼりしようね」
 やくそくだよ。きっとまた会えるその日まで、ぼくもれんしゅうしておくから。
 かんちゃん、ほら見て。あきにみんなでうえたチューリップのめが出ている。
 「ほんとだね」なに色のお花がさくのかなぁ。「お花がさくころには、ぼくたちは一年生だね」

 ぼくはそのよる、ゆめをみた。
 一年生のぼくは、かけっこがはやくなって、かんちゃんとおにごっこをしている。
 さくらの木のところまで走って行くと、ぼくはじょうずに木にのぼるんだ。
 木のえだにすわって手をのばすと、かんちゃんはぼくの手をぎゅっとつかんだ。
 そして、太くて強い足をみきにかけて、ぼくのいるえだまでよじのぼったんだ。
 二人ならんで見たお空は、とっても青かったよ。


 ぼくは今日、赤いネクタイをしめて、パパみたいなスーツをきて、小学校に行くんだよ。ぴかぴかの黒いランドセルもせおってね。
 ママもピンクのワンピースをきて、めずらしくおけしょうもしちゃってさ。
これから入学式なんだよ。
 かんちゃんのようご学校も、おなじ日に入学式なんだって。
 かんちゃんも、今ごろ『かんちゃん号』にのって、かっこいいスーツきているかな。

 たいいくかんのとびらがあいたら、ぼくたちは一年生になるんだね。
 いろんなものを見たり、聞いたり、考えたりして、少しずつ大きくなっていくけれど、さくらの木の下のやくそくはわすれない。
 ぼくたちはずっとたいせつな友だちだもの。

 ――新入生の入場です。はくしゅでむかえましょう。



                              了


a1200_000078.jpg




関連記事

この記事へのコメント

kage

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

Posted at 15:07:22 2013/06/27 by

この記事へのコメント

kage

Re: 泣けました…

お褒めいただきありがとうございます。
このお話しは実話ではありませんが、一部は私が体験した場面です。以前私は幼稚園にボランテアで出入りしたことがありまして、その幼稚園には車椅子の男の子がいました。大人は障害者に対して同情とか差別の目で見てしまいますが、子どもは純粋にみんな仲良くお友達なのです。
運動会で何人かの子どもたちが車椅子を押して走り、他の子は応援する、それを見て他人の私も涙が出てしまいました。そこからこのお話しは生まれました。

>「ひらがなで~感じました」
分かっていただけて嬉しいです。私の言いたいことが。
子どもの頃は誰でも素直で純粋。車椅子の子も引っ込み思案でおとなしい男の子も、やがて成長して大人になる。つらい事もあるかもしれない。お互いそれぞれの人生を生きていくけれど、幼稚園での思い出は忘れずに優しい心のままでいて欲しい。…なんて、実際に私が出会った、当時のあの子たちに向けての願いも含まれています。

作者の心の清らかさと温かさって……。きゃーやめてやめて! 他に女同士の陰湿バトルの話しを書いているのに、それ読まれたらそんな言葉出てこないって!
ともかく、読んでいただいてありがとうございました。

Posted at 22:45:11 2011/10/11 by 朔の月(さくのつき)

この記事へのコメント

kage

泣けました…

なんでだろうか?fateは幼い子どもの心の叫びのようなモノを、まるで自分がかつて体験したようにリアルに感じることがあります。
この子のご両親は、なんて素敵な息子さんを育てたんだろう!と心から感動いたします。
そして、こんな世界を描ける作者様の心の清らかさと温かさに打たれました。
ひらがなで書かれている子どもの目線、その目に映る光景の何もかもが新鮮で輝いていて、だけど同時に存在する世の中の残酷さをダイレクトに感じました。

本気で素晴らしいです。
ありがとうございました。

Posted at 13:45:50 2011/10/11 by fate

コメントフォーム

kage


URL:




Comment:

Password:

Secret:

管理者にだけ表示を許可する

この記事へのトラックバック