11巻12巻、2冊購入!
11巻にはジャンプ十二傑新人漫画賞準入選作品、2004年のデビュー作のネウロが、12巻には、その続編の読み切り版ネウロが掲載されています。
画のタッチはギャグ漫画向きで、うまいとは言えませんが、予想外のトリックはなかなかおもしろいと思いました。ネウロが部屋に入ったとたんにトリックを解いて、読者に想像する隙を与えないパターンは連載編と同じでした。
連載編との違いは、ネウロが謎を食べつくし『魔界は滅んだ』という点と、ネウロの弥子への虐待は頭を掴む程度、ネウロが弥子の前に初めて姿を現す場面、ネウロが「貴様ら(人間)が大好きだぞ」弥子が「この化け物が嫌いではない」と言っちゃって、すでに仲むつましい関係であること。
まあ、読み切りだから、長期連載作品と違う設定があるのは仕方ないですが。
12巻最後のページにある作者のあとがきに、こう書いてありました。
『この当時のこだわり具合は若さ無くしてできないもので、細部の小ネタを全て発見できた方はいないと断言できます(笑)』
え? え? まだ発見できてない小ネタがある?
全巻読んで、だいぶ見つけたつもりだったけど……何だろう、気になるな。
帯に書いてあった紹介文にも
『全エピソードが衝撃のラストに繋がる』とありました。
そう、確かに、いきなり一巻から伏線だらけ。しかもそれが伏線だと気づくのはだいぶ後になってから、という構成の細かさには感動ものでした。
作者が「若さ無くして」、というくらいだし、デビュー作にパワー使ってしまっては後が辛くなるんじゃ…。暗殺教室もかなりぶっ飛んでるけど。
12巻の表紙イラストがネウヤコファンには嬉しいカット。互いにもたれ掛かったような背中合わせの二人の表情も優しい。
ネウロのルーツが未発表作品にある、だと?あの美女が気になるじゃないですか。 それ、どこかに掲載してくださいよ。

11巻にはジャンプ十二傑新人漫画賞準入選作品、2004年のデビュー作のネウロが、12巻には、その続編の読み切り版ネウロが掲載されています。
画のタッチはギャグ漫画向きで、うまいとは言えませんが、予想外のトリックはなかなかおもしろいと思いました。ネウロが部屋に入ったとたんにトリックを解いて、読者に想像する隙を与えないパターンは連載編と同じでした。
連載編との違いは、ネウロが謎を食べつくし『魔界は滅んだ』という点と、ネウロの弥子への虐待は頭を掴む程度、ネウロが弥子の前に初めて姿を現す場面、ネウロが「貴様ら(人間)が大好きだぞ」弥子が「この化け物が嫌いではない」と言っちゃって、すでに仲むつましい関係であること。
まあ、読み切りだから、長期連載作品と違う設定があるのは仕方ないですが。
12巻最後のページにある作者のあとがきに、こう書いてありました。
『この当時のこだわり具合は若さ無くしてできないもので、細部の小ネタを全て発見できた方はいないと断言できます(笑)』
え? え? まだ発見できてない小ネタがある?
全巻読んで、だいぶ見つけたつもりだったけど……何だろう、気になるな。
帯に書いてあった紹介文にも
『全エピソードが衝撃のラストに繋がる』とありました。
そう、確かに、いきなり一巻から伏線だらけ。しかもそれが伏線だと気づくのはだいぶ後になってから、という構成の細かさには感動ものでした。
作者が「若さ無くして」、というくらいだし、デビュー作にパワー使ってしまっては後が辛くなるんじゃ…。暗殺教室もかなりぶっ飛んでるけど。
12巻の表紙イラストがネウヤコファンには嬉しいカット。互いにもたれ掛かったような背中合わせの二人の表情も優しい。
ネウロのルーツが未発表作品にある、だと?あの美女が気になるじゃないですか。 それ、どこかに掲載してくださいよ。
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22~23巻のあらすじが長くなったので、感想は分けて書きました。
いや~、あらすじでまとめたら、あっさりしてしまいましたが、私の文章力でこの作品の深みが伝わったでしょうか。不安だわ。
最終決戦、死を覚悟した殺し合いの最中で、ネウロは回想します。
「人間は折れた心を繋ぎ合わせ、必ずまた再生する」ネウロが弥子に言った言葉です。
ネウロは人間の命を奪ったりはしない。なぜなら、人間はくじけても立ち上がり、いつか謎を作るかもしれない。ネウロはそれを待っている。人間の可能性に期待しているのです。だからこそ、人間の数を減らす「病気」であるシックスは殺さなければならないのだと。
以前シックスは「人間の脳は一度折れたら、折れ目はどう伸ばしても消えない」と言っています。ネウロと対極の価値観。考え方の差がはっきりしています。
人間を殺したことがないと言うネウロに驚く弥子ですが、実は私も「そうだっけ?」と思ってしまった一人です。HAL編で倒した人たちは、死んでいなかったのですね。そういえば五本指もネウロが殺したのでなく、3人は自殺、あとは葛西が殺し、その葛西は生きている。人を殺さない主義のネウロが殺すべき対象はシックスのみということです。それほどの絶対悪。敵キャラがかっこよく描かれている漫画もあるけど、シックスは極悪人すぎて、ちっとも魅力を感じない。「吐き気を催す悪意」と表現してあったが、まさにそんな感じ。
そして、五本指はそれぞれに属性がありました。葛西は「火」、DRは「水」、テラは「土」、ヴァイジャアは「植物」、ジェニュインは「空気」、ボスのシックスは「金属」。担当が分けられているなんて戦隊ヒーローみたいです。そこは認めるとして、「空気」って。それでネウロに勝てると思ったのかい。案の定、ジェニュインはあっけなく敗北しましたけどね。
それにしても、ネウロのハッタリには仰天でした。弥子が魔力を放出する体質だなんて。最終回を目前にして、まさかの真実が?…と思えば真っ赤なウソ。シックスまでも騙す演技力ですね。やられた。
また、ネウロが自らの食糧源の確保のために、命を懸けて人間を守る。矛盾とも言える行為を、なんの迷いもなくしてしまう。頭脳で生きてきたネウロが、その矛盾の理由がわからないわけがない。弥子の影響、それ以外の何物でもない。気づいていて分からないフリをしてはぐらかす。素直じゃない男ですね、ネウロって。
「靴を舐めろ、その全身で」ネウロがシックスに最後に言い放った言葉。根っからのドSだわー。ネウロの靴底にはシックスの血が付いています。靴を舐めるという恥辱を受けさせるとは精神的にかなりのダメージでしょう。究極のドS対決はネウロの勝ちでした。
それから、Ⅹの最後の変身が笹塚さんだなんて。泣かせます。笹塚さんの死は本当に無念でした。読者も心残りです。そこで、弥子に最後にちゃんとお別れをさせてあげて、笹塚の心を読んでありがとうを伝える、そんな心憎いイタズラをして力尽きるⅩの姿こそ、本当のⅩの正体と言うわけですね。生物兵器なんかじゃなくⅩとして生きた歳月。それこそが本当の自分。弥子が13巻で言った「Ⅹはすでに正体を持った人間」はここに繋がるのですね。
これらのすべてが作者の筋書き通りだとしたら、完成されたプランに感心します。
この漫画のすばらしいところは、一貫してブレがないこと。
連載前からすでに最終回までの細かな設定を考えてあったという構成力は、多くのファンから称賛されていますが、矛盾点が見つからないというのは、新人作家の描いた作品にしては珍しいのではないかと。(作画ミスは許してあげましょう)
たとえば、連載が長すぎて初期の設定を作者が忘れてしまっている、とか、結末を決めずにスタートしたので途中でつじつまが合わなくなってしまい、帳尻あわせのために、食い違う部分はなかったことにしてしまおうとする、とか。読者ががっかりする流れになってしまう漫画はたくさんあります。だけどネウロの場合は構成が細かく行き届いている。作者が言った「責任ある終わり方」の言葉の意味も筋が通っています。さすがです。
まぁ矛盾があるとしたら、作中で季節が流れているのに、弥子がずっと16歳のままというところでしょうか。そこは漫画にありがちな「サザエさん方式」ということで、目をつぶりましょう。
もし、実写化されるとしたら、ネウロ役は松田翔太くんでお願いします。切れ長でセクシーな目、上品な話し方、長い指。ぴったりだと思います。あと笛吹さんは、八嶋智人さんなんてどう?
ネウロの代わりに謎を解いたことにさせれていた弥子の決まり文句は「犯人はお前だ」。でも最後はネウロ自身で言いました。
_convert_20121121200750.jpg)
その後のキメ顔は、これ。
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ほら、松田くんぽくない?
と言うわけで……。
こんな素敵な漫画に『出会えてよかった!』
いや~、あらすじでまとめたら、あっさりしてしまいましたが、私の文章力でこの作品の深みが伝わったでしょうか。不安だわ。
最終決戦、死を覚悟した殺し合いの最中で、ネウロは回想します。
「人間は折れた心を繋ぎ合わせ、必ずまた再生する」ネウロが弥子に言った言葉です。
ネウロは人間の命を奪ったりはしない。なぜなら、人間はくじけても立ち上がり、いつか謎を作るかもしれない。ネウロはそれを待っている。人間の可能性に期待しているのです。だからこそ、人間の数を減らす「病気」であるシックスは殺さなければならないのだと。
以前シックスは「人間の脳は一度折れたら、折れ目はどう伸ばしても消えない」と言っています。ネウロと対極の価値観。考え方の差がはっきりしています。
人間を殺したことがないと言うネウロに驚く弥子ですが、実は私も「そうだっけ?」と思ってしまった一人です。HAL編で倒した人たちは、死んでいなかったのですね。そういえば五本指もネウロが殺したのでなく、3人は自殺、あとは葛西が殺し、その葛西は生きている。人を殺さない主義のネウロが殺すべき対象はシックスのみということです。それほどの絶対悪。敵キャラがかっこよく描かれている漫画もあるけど、シックスは極悪人すぎて、ちっとも魅力を感じない。「吐き気を催す悪意」と表現してあったが、まさにそんな感じ。
そして、五本指はそれぞれに属性がありました。葛西は「火」、DRは「水」、テラは「土」、ヴァイジャアは「植物」、ジェニュインは「空気」、ボスのシックスは「金属」。担当が分けられているなんて戦隊ヒーローみたいです。そこは認めるとして、「空気」って。それでネウロに勝てると思ったのかい。案の定、ジェニュインはあっけなく敗北しましたけどね。
それにしても、ネウロのハッタリには仰天でした。弥子が魔力を放出する体質だなんて。最終回を目前にして、まさかの真実が?…と思えば真っ赤なウソ。シックスまでも騙す演技力ですね。やられた。
また、ネウロが自らの食糧源の確保のために、命を懸けて人間を守る。矛盾とも言える行為を、なんの迷いもなくしてしまう。頭脳で生きてきたネウロが、その矛盾の理由がわからないわけがない。弥子の影響、それ以外の何物でもない。気づいていて分からないフリをしてはぐらかす。素直じゃない男ですね、ネウロって。
「靴を舐めろ、その全身で」ネウロがシックスに最後に言い放った言葉。根っからのドSだわー。ネウロの靴底にはシックスの血が付いています。靴を舐めるという恥辱を受けさせるとは精神的にかなりのダメージでしょう。究極のドS対決はネウロの勝ちでした。
それから、Ⅹの最後の変身が笹塚さんだなんて。泣かせます。笹塚さんの死は本当に無念でした。読者も心残りです。そこで、弥子に最後にちゃんとお別れをさせてあげて、笹塚の心を読んでありがとうを伝える、そんな心憎いイタズラをして力尽きるⅩの姿こそ、本当のⅩの正体と言うわけですね。生物兵器なんかじゃなくⅩとして生きた歳月。それこそが本当の自分。弥子が13巻で言った「Ⅹはすでに正体を持った人間」はここに繋がるのですね。
これらのすべてが作者の筋書き通りだとしたら、完成されたプランに感心します。
この漫画のすばらしいところは、一貫してブレがないこと。
連載前からすでに最終回までの細かな設定を考えてあったという構成力は、多くのファンから称賛されていますが、矛盾点が見つからないというのは、新人作家の描いた作品にしては珍しいのではないかと。(作画ミスは許してあげましょう)
たとえば、連載が長すぎて初期の設定を作者が忘れてしまっている、とか、結末を決めずにスタートしたので途中でつじつまが合わなくなってしまい、帳尻あわせのために、食い違う部分はなかったことにしてしまおうとする、とか。読者ががっかりする流れになってしまう漫画はたくさんあります。だけどネウロの場合は構成が細かく行き届いている。作者が言った「責任ある終わり方」の言葉の意味も筋が通っています。さすがです。
まぁ矛盾があるとしたら、作中で季節が流れているのに、弥子がずっと16歳のままというところでしょうか。そこは漫画にありがちな「サザエさん方式」ということで、目をつぶりましょう。
もし、実写化されるとしたら、ネウロ役は松田翔太くんでお願いします。切れ長でセクシーな目、上品な話し方、長い指。ぴったりだと思います。あと笛吹さんは、八嶋智人さんなんてどう?
ネウロの代わりに謎を解いたことにさせれていた弥子の決まり文句は「犯人はお前だ」。でも最後はネウロ自身で言いました。
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その後のキメ顔は、これ。
_convert_20121121200717.jpg)
ほら、松田くんぽくない?
と言うわけで……。
こんな素敵な漫画に『出会えてよかった!』
警察の銃撃から逃走したシックスは都心から離れた洋館に身を隠す。そこは本城が最後にシックスを裏切り、弥子に情報を漏らしたアジト。仲直りした弥子とネウロは吾代の車で潜伏場所へと向かった。
その頃シックスは活動しにくくなった日本から出国準備中。だがそこへ到着したネウロが踏み込む。シックスとネウロは正面対峙。今にも激戦が始まろうとしていた。
その瞬間、弥子に化けたXIが奇襲攻撃。ネウロと弥子は、その完璧な変身能力と攻撃力に驚愕する。
やがて二人は廃墟の遊園地に誘いこまれる。衰弱した上に弥子を庇いながら戦うネウロは、シックスとXIの凄まじい攻撃に防御するだけで精一杯。さらにXIは弥子の記憶を読んで、過去に恐怖を感じた犯罪者たちに化けて攻撃してきた。シックスも自らの体を金属化させて圧倒的な力を見せ付ける。
弥子が死を覚悟した直後、ネウロが魔界能力で弥子を遠くへ放り投げ逃がした。シックスは訊く「あの足手まといをかばうために無駄に魔力を消耗する。そこまでして、なぜあの娘を助ける」と。するとネウロは「弥子は魔力を放出する体質なのだ」と答えた。つまり非常用に持ち運べるバッテリー。シックスは何かを目論む表情を見せた。
その時、吾代の車が飛び込んできた。荷台には気を失った弥子がいる。ネウロは車に掴まり、ひとまず退却。……かと思わせて、これもネウロの作戦。シックスから離れた隙に策を仕込むのだという。
ネウロの策とはXIに弥子を狙わせること。先ほどの「弥子はエネルギー源」と言ったのは全くのウソ。そう言えば敵は分断し、XIは弥子を標的にする。つまりは弥子がXIを倒すのだ。
XIが誰にでも変身できるのならXにもなれるはず。中身までXになることでX自身の記憶を取り戻せばいい。「我が輩は貴様にならそれができると信じている」。ネウロは弥子を信頼しすべてを任せた。弥子はそれに応える。
弥子を残しシックスの元へ跳んで戻るネウロ。ネウロ対シックス。弥子対XIの戦いが始まる。
ひとりになった弥子の元へ、ネウロに化けたXIが現れ近づく。だが弥子は躊躇なく確信を持って見破った。「あのネウロが私を信じていると言った。それがどれほどのことか、あなたは分かっていない。信じたネウロが戻ってくるはずがない」と。
完璧な変身だとうぬぼれていたXIは冷静さを失い逆上する。そんなXIの内側を弥子は見抜いていた。
さっき過去の犯罪者に化けたとき、化けるのを避けていた犯罪者がいた。それはX。弥子は自分の頭を差し出し、XIに記憶を読ませた。
弥子の脳内にあるXの記憶。Xのパートナー、アイの記憶。シックスに昔の記憶を消されていたXIは、弥子によりXだった頃の記憶を取り戻した。
一方、ネウロはシックスとの死闘で魔力も体力も使い果たし限界に来ていた。
そこに戻ってきたのは、弥子の死体を腕にぶら下げたXI。ネウロの目の前で弥子を解体し、屈辱を味わわせてやろうとするシックスが見たものは、気を失って倒れているだけの弥子。弥子の死体はトリックだった。シックスが一瞬の隙を見せたその時、XIはXの姿に戻り、シックスの心臓をえぐり取った。
Xは言う「俺は人間だ。新しい血族なんて、あんた一人でやってろよ」そのとたん、シックスはXの胸に仕込んでおいた爆弾を爆発させ、Xは重症を負った。心臓を奪われたシックスは金属細胞の制御を失い、ダメージを受け不利な状態に。
だがその直後、シックスは飛んできたステルス爆撃機に掴まり逃亡した。
ネウロは諦めない。弥子に「我が輩が貴様ら人間の病気(シック)を治してやる」と言い残し、魔界電池すべてを使い切り、逃げるシックスを追いかけた。
地上に残された弥子は、重症のXを気遣う。瀕死のXは、最後にある人物に化けて弥子を泣かせた。その人物とは笹塚。Xが化けた笹塚は弥子に「ありがとう」の言葉を遺し、Xの姿に戻った直後、静かに息を引き取った。XはXIだった頃、笹塚の記憶を読み取っている。笹塚の「ありがとう」は本物の笹塚の、そしてXからの遺言でもある、と言う吾代の言葉を噛み締める。「出会えて本当によかった。」弥子は出会いに感謝し、前進しようと誓った。そして、人間には届かない上空へと決戦の舞台を変えたネウロに、未来を託すのであった。
その頃、高速で飛行するステルス機の上で対峙するシックスとネウロ。ネウロは言い放つ「ただ一人の新種として死ぬがいい」
新しい血族など、最初からいない。新種と言えるのはシックスただ一人。新しい血族と思われた連中は、ただのシックスの信奉者。歪んだ大義名分で集まった者たち。特別な能力のある人間を洗脳し、強化細胞を移植した、悪意を満足させるためのシックスの手足に過ぎなかったのだ。
すでに、体力が消耗したネウロは、シックスの攻撃をかわすのもやっとだ。
だが、ネウロはこの瞬間を待っていた。死を覚悟した魔人の一撃。最後の魔界能力を出す。ネウロの絶対無敵の一撃で、シックスは胸から下が切り取られ、頭だけが残った。
脳さえあれば生きていけるというシックスに、髪が白くなり干からびるほどに魔力を使い果たしたネウロに直接攻撃する余力はない。
そこでネウロが考えた屈辱的な殺し方。「靴を舐めろ、その全身で」シックスを空中に放し、爆撃機に腰掛けるネウロの足に衝突させると、シックスは四方に散らばり死亡した。しかし、ネウロもまた、爆撃機ごと太平洋に向かって急降下している。
墜落の直前、ネウロは考える。そこまでして人間を守る理由は、食糧源だから。本当にそれだけの理由だろうか……。答えを出さないまま、遂には墜落してしまった。
気がつくと、救護ヘリの中。ヘリを要請したのは篚口。弥子に頼まれ救助に向かったのだと言う。ネウロを救った最新の救助システムを作ったのは、HALの生みの親、春川教授だった。人間を助けようとした魔人は、これまで軽くあしらってきた人間に命を救われたのだ。不思議な因縁を感じているのは篚口だけではなく、ネウロも同じ。
一週間後、ネウロは昏睡状態が続いたまま、事務所で眠っている。弥子が笹塚の墓参りに行き戻ってくると、事務所内に謎の人物が立っている。その人物とはゼラ。魔界を逃れ人間界で暮らす下級魔人だという。意識を取り戻したネウロにゼラは言う。「地上でここまで弱ったら回復の見込みはない。そのまま干からびて死んでしまう」と。
ゼラの口は魔界へと通じている。ネウロが回復するにはゼラの口を通って魔界へ帰るしかない。しかしネウロは迷っている。時間軸の違う魔界から再び地上に戻ってこようとしても、同じ時空へ戻って来られるとは限らないのだ。
迷うネウロに弥子は励ましの言葉をかけた。
「人間の世界はいつだって進化し続け未来を作る。ネウロがすぐに私を見つけられるように成長し輝いて待っている。だから心配しないで帰って来い」と。その言葉に勇気付けられたネウロは弥子をハグして言った。「留守は任せたぞ。相棒」
翌朝、弥子が目覚めると、ネウロはもういない――。
三年後。探偵として世界を飛び回っている弥子は、メキシコに来ていた。大使館を占拠したテロリストを説得し、友好的に投降させていた。
弥子は今でも信じて待っている。謎で満ちたこの世界に、あいつは必ず戻ってくると。
帰国の飛行機の中、うとうと居眠りの弥子。ふと気づけば窓の外に人の気配が。飛行中のジェット機に垂直に立つ男がいる。そんなことが出来るのはあいつしかいない。
――「脳髄の空腹がこの世界を求める。この謎は我が輩の舌の上だ。」
―完―
その頃シックスは活動しにくくなった日本から出国準備中。だがそこへ到着したネウロが踏み込む。シックスとネウロは正面対峙。今にも激戦が始まろうとしていた。
その瞬間、弥子に化けたXIが奇襲攻撃。ネウロと弥子は、その完璧な変身能力と攻撃力に驚愕する。
やがて二人は廃墟の遊園地に誘いこまれる。衰弱した上に弥子を庇いながら戦うネウロは、シックスとXIの凄まじい攻撃に防御するだけで精一杯。さらにXIは弥子の記憶を読んで、過去に恐怖を感じた犯罪者たちに化けて攻撃してきた。シックスも自らの体を金属化させて圧倒的な力を見せ付ける。
弥子が死を覚悟した直後、ネウロが魔界能力で弥子を遠くへ放り投げ逃がした。シックスは訊く「あの足手まといをかばうために無駄に魔力を消耗する。そこまでして、なぜあの娘を助ける」と。するとネウロは「弥子は魔力を放出する体質なのだ」と答えた。つまり非常用に持ち運べるバッテリー。シックスは何かを目論む表情を見せた。
その時、吾代の車が飛び込んできた。荷台には気を失った弥子がいる。ネウロは車に掴まり、ひとまず退却。……かと思わせて、これもネウロの作戦。シックスから離れた隙に策を仕込むのだという。
ネウロの策とはXIに弥子を狙わせること。先ほどの「弥子はエネルギー源」と言ったのは全くのウソ。そう言えば敵は分断し、XIは弥子を標的にする。つまりは弥子がXIを倒すのだ。
XIが誰にでも変身できるのならXにもなれるはず。中身までXになることでX自身の記憶を取り戻せばいい。「我が輩は貴様にならそれができると信じている」。ネウロは弥子を信頼しすべてを任せた。弥子はそれに応える。
弥子を残しシックスの元へ跳んで戻るネウロ。ネウロ対シックス。弥子対XIの戦いが始まる。
ひとりになった弥子の元へ、ネウロに化けたXIが現れ近づく。だが弥子は躊躇なく確信を持って見破った。「あのネウロが私を信じていると言った。それがどれほどのことか、あなたは分かっていない。信じたネウロが戻ってくるはずがない」と。
完璧な変身だとうぬぼれていたXIは冷静さを失い逆上する。そんなXIの内側を弥子は見抜いていた。
さっき過去の犯罪者に化けたとき、化けるのを避けていた犯罪者がいた。それはX。弥子は自分の頭を差し出し、XIに記憶を読ませた。
弥子の脳内にあるXの記憶。Xのパートナー、アイの記憶。シックスに昔の記憶を消されていたXIは、弥子によりXだった頃の記憶を取り戻した。
一方、ネウロはシックスとの死闘で魔力も体力も使い果たし限界に来ていた。
そこに戻ってきたのは、弥子の死体を腕にぶら下げたXI。ネウロの目の前で弥子を解体し、屈辱を味わわせてやろうとするシックスが見たものは、気を失って倒れているだけの弥子。弥子の死体はトリックだった。シックスが一瞬の隙を見せたその時、XIはXの姿に戻り、シックスの心臓をえぐり取った。
Xは言う「俺は人間だ。新しい血族なんて、あんた一人でやってろよ」そのとたん、シックスはXの胸に仕込んでおいた爆弾を爆発させ、Xは重症を負った。心臓を奪われたシックスは金属細胞の制御を失い、ダメージを受け不利な状態に。
だがその直後、シックスは飛んできたステルス爆撃機に掴まり逃亡した。
ネウロは諦めない。弥子に「我が輩が貴様ら人間の病気(シック)を治してやる」と言い残し、魔界電池すべてを使い切り、逃げるシックスを追いかけた。
地上に残された弥子は、重症のXを気遣う。瀕死のXは、最後にある人物に化けて弥子を泣かせた。その人物とは笹塚。Xが化けた笹塚は弥子に「ありがとう」の言葉を遺し、Xの姿に戻った直後、静かに息を引き取った。XはXIだった頃、笹塚の記憶を読み取っている。笹塚の「ありがとう」は本物の笹塚の、そしてXからの遺言でもある、と言う吾代の言葉を噛み締める。「出会えて本当によかった。」弥子は出会いに感謝し、前進しようと誓った。そして、人間には届かない上空へと決戦の舞台を変えたネウロに、未来を託すのであった。
その頃、高速で飛行するステルス機の上で対峙するシックスとネウロ。ネウロは言い放つ「ただ一人の新種として死ぬがいい」
新しい血族など、最初からいない。新種と言えるのはシックスただ一人。新しい血族と思われた連中は、ただのシックスの信奉者。歪んだ大義名分で集まった者たち。特別な能力のある人間を洗脳し、強化細胞を移植した、悪意を満足させるためのシックスの手足に過ぎなかったのだ。
すでに、体力が消耗したネウロは、シックスの攻撃をかわすのもやっとだ。
だが、ネウロはこの瞬間を待っていた。死を覚悟した魔人の一撃。最後の魔界能力を出す。ネウロの絶対無敵の一撃で、シックスは胸から下が切り取られ、頭だけが残った。
脳さえあれば生きていけるというシックスに、髪が白くなり干からびるほどに魔力を使い果たしたネウロに直接攻撃する余力はない。
そこでネウロが考えた屈辱的な殺し方。「靴を舐めろ、その全身で」シックスを空中に放し、爆撃機に腰掛けるネウロの足に衝突させると、シックスは四方に散らばり死亡した。しかし、ネウロもまた、爆撃機ごと太平洋に向かって急降下している。
墜落の直前、ネウロは考える。そこまでして人間を守る理由は、食糧源だから。本当にそれだけの理由だろうか……。答えを出さないまま、遂には墜落してしまった。
気がつくと、救護ヘリの中。ヘリを要請したのは篚口。弥子に頼まれ救助に向かったのだと言う。ネウロを救った最新の救助システムを作ったのは、HALの生みの親、春川教授だった。人間を助けようとした魔人は、これまで軽くあしらってきた人間に命を救われたのだ。不思議な因縁を感じているのは篚口だけではなく、ネウロも同じ。
一週間後、ネウロは昏睡状態が続いたまま、事務所で眠っている。弥子が笹塚の墓参りに行き戻ってくると、事務所内に謎の人物が立っている。その人物とはゼラ。魔界を逃れ人間界で暮らす下級魔人だという。意識を取り戻したネウロにゼラは言う。「地上でここまで弱ったら回復の見込みはない。そのまま干からびて死んでしまう」と。
ゼラの口は魔界へと通じている。ネウロが回復するにはゼラの口を通って魔界へ帰るしかない。しかしネウロは迷っている。時間軸の違う魔界から再び地上に戻ってこようとしても、同じ時空へ戻って来られるとは限らないのだ。
迷うネウロに弥子は励ましの言葉をかけた。
「人間の世界はいつだって進化し続け未来を作る。ネウロがすぐに私を見つけられるように成長し輝いて待っている。だから心配しないで帰って来い」と。その言葉に勇気付けられたネウロは弥子をハグして言った。「留守は任せたぞ。相棒」
翌朝、弥子が目覚めると、ネウロはもういない――。
三年後。探偵として世界を飛び回っている弥子は、メキシコに来ていた。大使館を占拠したテロリストを説得し、友好的に投降させていた。
弥子は今でも信じて待っている。謎で満ちたこの世界に、あいつは必ず戻ってくると。
帰国の飛行機の中、うとうと居眠りの弥子。ふと気づけば窓の外に人の気配が。飛行中のジェット機に垂直に立つ男がいる。そんなことが出来るのはあいつしかいない。
――「脳髄の空腹がこの世界を求める。この謎は我が輩の舌の上だ。」
―完―
ネウロがジェニュインを屈服させた理由は、『新しい血族』の情報を白状させるため。ジェニュインの口からシックスの正体が明かされる。
シックスは製薬会社を買収し、各国から拉致した人間で人体実験を行っていた。その目的はバイオ兵器の開発。シックスの元へあらゆる兵器の技術が集まっていると言う。そしてさらにネウロがシックスの潜伏場所を吐かせようとした時、ジェニュインは自らの口を封じるため自爆した。
その頃シックスは「Ⅹ」を強化ガラスの中で初期化させ、生物兵器としての進化を完成させていた。「Ⅹ」の新しい名は「ⅩⅠ(イレブン)」。17歳の少女。それが本来のⅩの姿だ。
ひとヤマ超えても心休まる暇もないとぼやく弥子に、思いがけず笹塚から釣りの誘い。ネウロと弥子、笹塚たち警察グループ、助っ人の本城が岩場に集まり釣り大会がスタート。
この機会に弥子は、前から気になっていた娘・刹那の死について本城に質問する。すると本城は「犯人を殺したいほど憎んでいるが、殺す機がめぐってこない」と打ち明ける。弥子はその言葉の意味を追求せず胸にしまった。
一方、笹塚とネウロも密談中。盗聴されない岩場にやってきたのは極秘の話をするため。
釣りイベントは混乱のあげくお開きになるが、この日以来、笹塚は行方不明となった。
心配した弥子が警視庁へと足を運ぶと、資料室に出しっぱなしにしてあった笹塚の家族殺人事件のファイルを目にする。
10年前、笹塚の両親と妹が自宅で何者かに殺害され、死体が切り刻まれて木の箱に入れられる事件が起きた。怪盗「Ⅹ」第一号事件とされるものだ。笹塚が行方知れずになったのは、この事件を追ってのことだろうと皆は推測する。
事務所に戻った弥子は、ネウロに笹塚の不明な行動について問いかける。すると、ネウロは連鎖的に推理を紡いでいく。
笹塚家族の事件は他の「Ⅹ」の事件と違う点がある。それは「木の箱」だということ。「Ⅹ」は死体を観察するために透明な箱に入れる。「Ⅹ」には木の箱に入れる動機がないのだ。シックスはこれまでの犯行声明で、自分の力を誇示するために、自分の名前「6」を示してきた。箱は6面体。つまり、笹塚の家族を殺した真犯人はシックスである可能性がある。ではなぜ、シックスに笹塚の家族を殺す必要があるのか。当時ジャーナリストをしていた笹塚の父親は、拉致事件を追ううちに人体実験の秘密を突き止めてしまう。そのためシックスに消されてしまった。これが真相。
ネウロの推理で、笹塚の事件、「Ⅹ」、血族、それらが一本の糸でつながった。しかもこの推理を、釣りのときに笹塚に話したとネウロは言う。それならシックスへ復讐しに行くのではと不安になる弥子だが、冷静沈着な笹塚なら心配ないと油断してしまう。ところが、もはや笹塚は行動を起こしていたのだった。
時を同じくして、葛西はビルに放火し「六」の炎文字を描いていた。ネウロも放火現場へと足を運ぶ。その頃弥子は吾代の病室へ行き、事件の真相について報告していた。それを聞いた吾代は、笹塚の危険な性格ならば必ず復讐に向かうはずだと、弥子と共に急いで現場へと向かう。
すでに笹塚はシックスを待ち伏せし、長年かけた暗殺計画を実行しようとしていた。暴走した笹塚はシックスと対峙するが、後輩刑事に化けた「ⅩⅠ」によって刺され致命傷を負う。しかも、この報復攻撃もシックスが仕向けたものだと聞かされる。人の記憶が読める「ⅩⅠ」に脳を観察されたのち、駆けつけた弥子に笑顔を見せた直後、笹塚はシックスに射殺された。
葬式の後、弥子は本城に会いにいく。確信の持てない面持ちで、本城のこれまでの不可解な言動について問うと、本城は思いもかけない真実を自白する。
本城はシックスの熱心な信奉者だった。笹塚を罠にかけて復讐に走らせたこと、弥子たちを森に誘い込んだこと、すべてシックスの指示だった。さらなる衝撃は、脳が壊れると承知の上で刹那を実験体としてシックスに差し出していたのだ。本性を現した本城は橋の欄干の上で発狂し叫ぶ。が、直後、自ら毒を注射し川に落ちて死亡した。髪の毛を掻き乱し絶叫する弥子。
同時刻、放火しようとした葛西は、笛吹たち警察に追い詰められていた。だが、炎が回り爆発したビルの倒壊に巻き込まれる。
ほどなく弥子は事務所に来ていた。目の前で続けざまに大切な人が死に、失意の底で押しつぶされそうになっていた弥子は、「探偵のまね事なんかやっていなければ、こんな悲しい思いをすることもなかった」「最初から出会わなければよかった、みんなにも、あんたにも」と、ネウロに対して投げやりに吐き捨てた。その言葉はネウロを失望させてしまう。軽蔑をこめた丁寧なお辞儀でネウロは弥子を追い出した。
落ち込んだ弥子の元へ刑務所を脱獄したアヤが会いに来る。弥子は逃げ出してしまったこと、ネウロを怒らせてしまったことなどを打ち明ける。それに対してアヤは「出会いは必ず何かを残す」とアドバイス。笹塚が笑顔を残したように。「きっと本城も何かを残したはず」と言うアヤの言葉を聞いた弥子には思い当たる節がある。
本城の残したもの、それは、弥子への謝罪の手紙とシックスのアジトを示した地図だった。
本城の気持ちに応えるため、そして心配してくれた仲間への感謝を胸に、どんなに怖ろしい虐待が待っていようと、ネウロの元へ帰ろうと決意し事務所へと向かった。厳しい表情で応じるネウロに戻りたいと懇願すると、ネウロは軽いビンタ一発で弥子を許した。二人は笑顔で和解。
その頃、ひと仕事終えたシックスは逃走準備をしていた。だが、もはや緊急特別手配者となった今、シックスの乗る車は警察に見つかり取り囲まれる。
◇
笹塚が後輩刑事に刺されたときに差し込まれた1巻の一コマ。「おまえ後々犯人とかならねーよな」まさか、ここで持ってくるとは。最初からこの場面を想定して用意してあったのなら、ものすごい長い伏線です。違うとしても、再利用の巧妙さ。
それと笹塚が死の間際に微笑を見せる演出も泣かせます。この一瞬のために、作者が1巻からそれまで一度も笑った顔を書いていなかったというのが思惑だとしたら、これもすごい伏線。
それにしても、ネウロは肝心なときに弥子に魔界虫を付け忘れるんですね。そもそも弥子を監視してピンチを救うために虫が付いているんじゃなかったのか。まぁ死んだのは笹塚のほう。弥子が危機になっていないから、虫はネウロに報告しなかったのでしょうか。
弥子の「あんたにはわからない」。これはHAL編でも言いました。でも今回は違う。ネウロは人間を理解しようと試みるのです。
アヤは歌声で人の脳を揺らし癒す能力がある。ネウロはアヤの歌を聴けば弥子の心を理解できるのではと考えて刑務所に行きます。結局魔人の脳には効果がなく諦めて帰るのですが、これは変化のしるし。
笹塚の葬式でもわずかながら人間の死に喪失感を覚えてます。人間を虫けら扱いしていたネウロに仲間意識が芽生えてきた証拠です。
また、探偵の役をやらされていただけの弥子が、ネウロも気づけなかった本城の素顔を見抜いたのは、優れた洞察力から。吾代がネウロに「弥子抜きで行動するのは無理」と言うように、ネウロには弥子が必要不可欠。なのにやっぱり奴隷扱い。どこまでもドSな男です。
でも残念なのは、軽いビンタをされたときの弥子の顔。いつものように目が飛び出てぐへって言いましたから。やっぱりこれギャグ漫画だったかと思いましたよ。それまでのシリアスムードが台無しです。蚊をはたく程度の力のつもりがああなったのでしょうか。
そして、本城の正体にヒントが置いてあったにも関わらず気づかなかった私はアホです。刹那との回想でも、シックスの髪の毛らしきものが見切れてるとは思いつつも、この展開は想像できませんでした。シックスが刹那を病気にし、本城はそれを恨みシックスに復讐しようとしている。そう予想していましたが違いました。本城の言う殺したいほど憎む相手とは、自分のことだったのです。
笹塚の事件、Ⅹ、HAL、血族、すべてが繋がった糸はシックスの元へと向かっていたとは。
21巻での伏線のヒントは葛西の「ただの人間」です。終盤にきて伏線の回収が一気にきましたね。1~2巻のころは、ここまで大仕掛けな世界観の漫画だとは想像もできませんでした。
さあ、いよいよクライマックスへ。
シックスは製薬会社を買収し、各国から拉致した人間で人体実験を行っていた。その目的はバイオ兵器の開発。シックスの元へあらゆる兵器の技術が集まっていると言う。そしてさらにネウロがシックスの潜伏場所を吐かせようとした時、ジェニュインは自らの口を封じるため自爆した。
その頃シックスは「Ⅹ」を強化ガラスの中で初期化させ、生物兵器としての進化を完成させていた。「Ⅹ」の新しい名は「ⅩⅠ(イレブン)」。17歳の少女。それが本来のⅩの姿だ。
ひとヤマ超えても心休まる暇もないとぼやく弥子に、思いがけず笹塚から釣りの誘い。ネウロと弥子、笹塚たち警察グループ、助っ人の本城が岩場に集まり釣り大会がスタート。
この機会に弥子は、前から気になっていた娘・刹那の死について本城に質問する。すると本城は「犯人を殺したいほど憎んでいるが、殺す機がめぐってこない」と打ち明ける。弥子はその言葉の意味を追求せず胸にしまった。
一方、笹塚とネウロも密談中。盗聴されない岩場にやってきたのは極秘の話をするため。
釣りイベントは混乱のあげくお開きになるが、この日以来、笹塚は行方不明となった。
心配した弥子が警視庁へと足を運ぶと、資料室に出しっぱなしにしてあった笹塚の家族殺人事件のファイルを目にする。
10年前、笹塚の両親と妹が自宅で何者かに殺害され、死体が切り刻まれて木の箱に入れられる事件が起きた。怪盗「Ⅹ」第一号事件とされるものだ。笹塚が行方知れずになったのは、この事件を追ってのことだろうと皆は推測する。
事務所に戻った弥子は、ネウロに笹塚の不明な行動について問いかける。すると、ネウロは連鎖的に推理を紡いでいく。
笹塚家族の事件は他の「Ⅹ」の事件と違う点がある。それは「木の箱」だということ。「Ⅹ」は死体を観察するために透明な箱に入れる。「Ⅹ」には木の箱に入れる動機がないのだ。シックスはこれまでの犯行声明で、自分の力を誇示するために、自分の名前「6」を示してきた。箱は6面体。つまり、笹塚の家族を殺した真犯人はシックスである可能性がある。ではなぜ、シックスに笹塚の家族を殺す必要があるのか。当時ジャーナリストをしていた笹塚の父親は、拉致事件を追ううちに人体実験の秘密を突き止めてしまう。そのためシックスに消されてしまった。これが真相。
ネウロの推理で、笹塚の事件、「Ⅹ」、血族、それらが一本の糸でつながった。しかもこの推理を、釣りのときに笹塚に話したとネウロは言う。それならシックスへ復讐しに行くのではと不安になる弥子だが、冷静沈着な笹塚なら心配ないと油断してしまう。ところが、もはや笹塚は行動を起こしていたのだった。
時を同じくして、葛西はビルに放火し「六」の炎文字を描いていた。ネウロも放火現場へと足を運ぶ。その頃弥子は吾代の病室へ行き、事件の真相について報告していた。それを聞いた吾代は、笹塚の危険な性格ならば必ず復讐に向かうはずだと、弥子と共に急いで現場へと向かう。
すでに笹塚はシックスを待ち伏せし、長年かけた暗殺計画を実行しようとしていた。暴走した笹塚はシックスと対峙するが、後輩刑事に化けた「ⅩⅠ」によって刺され致命傷を負う。しかも、この報復攻撃もシックスが仕向けたものだと聞かされる。人の記憶が読める「ⅩⅠ」に脳を観察されたのち、駆けつけた弥子に笑顔を見せた直後、笹塚はシックスに射殺された。
葬式の後、弥子は本城に会いにいく。確信の持てない面持ちで、本城のこれまでの不可解な言動について問うと、本城は思いもかけない真実を自白する。
本城はシックスの熱心な信奉者だった。笹塚を罠にかけて復讐に走らせたこと、弥子たちを森に誘い込んだこと、すべてシックスの指示だった。さらなる衝撃は、脳が壊れると承知の上で刹那を実験体としてシックスに差し出していたのだ。本性を現した本城は橋の欄干の上で発狂し叫ぶ。が、直後、自ら毒を注射し川に落ちて死亡した。髪の毛を掻き乱し絶叫する弥子。
同時刻、放火しようとした葛西は、笛吹たち警察に追い詰められていた。だが、炎が回り爆発したビルの倒壊に巻き込まれる。
ほどなく弥子は事務所に来ていた。目の前で続けざまに大切な人が死に、失意の底で押しつぶされそうになっていた弥子は、「探偵のまね事なんかやっていなければ、こんな悲しい思いをすることもなかった」「最初から出会わなければよかった、みんなにも、あんたにも」と、ネウロに対して投げやりに吐き捨てた。その言葉はネウロを失望させてしまう。軽蔑をこめた丁寧なお辞儀でネウロは弥子を追い出した。
落ち込んだ弥子の元へ刑務所を脱獄したアヤが会いに来る。弥子は逃げ出してしまったこと、ネウロを怒らせてしまったことなどを打ち明ける。それに対してアヤは「出会いは必ず何かを残す」とアドバイス。笹塚が笑顔を残したように。「きっと本城も何かを残したはず」と言うアヤの言葉を聞いた弥子には思い当たる節がある。
本城の残したもの、それは、弥子への謝罪の手紙とシックスのアジトを示した地図だった。
本城の気持ちに応えるため、そして心配してくれた仲間への感謝を胸に、どんなに怖ろしい虐待が待っていようと、ネウロの元へ帰ろうと決意し事務所へと向かった。厳しい表情で応じるネウロに戻りたいと懇願すると、ネウロは軽いビンタ一発で弥子を許した。二人は笑顔で和解。
その頃、ひと仕事終えたシックスは逃走準備をしていた。だが、もはや緊急特別手配者となった今、シックスの乗る車は警察に見つかり取り囲まれる。
◇
笹塚が後輩刑事に刺されたときに差し込まれた1巻の一コマ。「おまえ後々犯人とかならねーよな」まさか、ここで持ってくるとは。最初からこの場面を想定して用意してあったのなら、ものすごい長い伏線です。違うとしても、再利用の巧妙さ。
それと笹塚が死の間際に微笑を見せる演出も泣かせます。この一瞬のために、作者が1巻からそれまで一度も笑った顔を書いていなかったというのが思惑だとしたら、これもすごい伏線。
それにしても、ネウロは肝心なときに弥子に魔界虫を付け忘れるんですね。そもそも弥子を監視してピンチを救うために虫が付いているんじゃなかったのか。まぁ死んだのは笹塚のほう。弥子が危機になっていないから、虫はネウロに報告しなかったのでしょうか。
弥子の「あんたにはわからない」。これはHAL編でも言いました。でも今回は違う。ネウロは人間を理解しようと試みるのです。
アヤは歌声で人の脳を揺らし癒す能力がある。ネウロはアヤの歌を聴けば弥子の心を理解できるのではと考えて刑務所に行きます。結局魔人の脳には効果がなく諦めて帰るのですが、これは変化のしるし。
笹塚の葬式でもわずかながら人間の死に喪失感を覚えてます。人間を虫けら扱いしていたネウロに仲間意識が芽生えてきた証拠です。
また、探偵の役をやらされていただけの弥子が、ネウロも気づけなかった本城の素顔を見抜いたのは、優れた洞察力から。吾代がネウロに「弥子抜きで行動するのは無理」と言うように、ネウロには弥子が必要不可欠。なのにやっぱり奴隷扱い。どこまでもドSな男です。
でも残念なのは、軽いビンタをされたときの弥子の顔。いつものように目が飛び出てぐへって言いましたから。やっぱりこれギャグ漫画だったかと思いましたよ。それまでのシリアスムードが台無しです。蚊をはたく程度の力のつもりがああなったのでしょうか。
そして、本城の正体にヒントが置いてあったにも関わらず気づかなかった私はアホです。刹那との回想でも、シックスの髪の毛らしきものが見切れてるとは思いつつも、この展開は想像できませんでした。シックスが刹那を病気にし、本城はそれを恨みシックスに復讐しようとしている。そう予想していましたが違いました。本城の言う殺したいほど憎む相手とは、自分のことだったのです。
笹塚の事件、Ⅹ、HAL、血族、すべてが繋がった糸はシックスの元へと向かっていたとは。
21巻での伏線のヒントは葛西の「ただの人間」です。終盤にきて伏線の回収が一気にきましたね。1~2巻のころは、ここまで大仕掛けな世界観の漫画だとは想像もできませんでした。
さあ、いよいよクライマックスへ。
ネウロの正体を知ったとは言え、完全には信用できない心中の笹塚。ひとまずは「味方」という認識をもって、その場を去った。
警察がテラの人間としての素性を調査するあいだ、ネウロは回復アイテムのストールを巻いて事務所で治癒に専念するのだった。
同じ頃、吾代は昔のなじみの気弱な少年と酒場で偶然会うが、彼は以前と違い、毒で簡単に人を殺せる人格に変わっていた。その少年もテロ集団『新しい血族』の一味。名前はヴァイジャア。
ネウロがストールを巻いている間は身動き出来ない。そのため、ネウロは吾代と弥子に少年のこれまでの足取りを調べさせた。
二人はヴァイジャアが過去に会ったとされる人物に会うため目的地に移動中、テラが過去に関わった人物を調査中の笹塚と鉢合わせ。笹塚が面会しようとした人物と、同一人物に行き当たったのだ。その重要参考人とは、本城だった。
本城の滞在するホテルで笹塚、吾代、弥子が事情聴取をしようとした時、葛西とヴァイジャアが現れ弥子たちを襲う。携帯電話でのネウロの指示で、証言者である本城を守ることを優先し、命からがらの脱出で逃げ切った。
笹塚たちが知りたがっている過去の情報は、日記に記し森に埋めてあると言う本城の証言で、笹塚たち一行は本城の案内で森へと急ぐ。だが資料探しにぐずついているうちに、敵に追いつかれ窮地に陥る。ヴァイジャアの植物を操る能力には勝ち目はなく絶体絶命の危機。しかしながらネウロが携帯で次々と作戦の指示を飛ばし、ヴァイジャアにダメージを与えることに成功。任務続行不可能と判断したヴァイジャアは自害した。
激闘のあと、森に埋めた資料を探そうとするが、本城は場所がわからないと言う。だがネウロの知恵で在り処を見つけ出す。資料は暗号化されていたが、またしても本城は読み方を忘れたと言う。これもまたネウロが簡単に読み解いた。
その資料には、『6年前、不動産業をしていたテラに自宅を売却した。』とあった。その跡地に出来たのは大手の製薬会社。おそらくその会社は『新しい血族』の巣窟になっている。ネウロは笹塚たち警察に、この会社を強制捜査するように言いつける。
事務所の椅子で回復に専念してから10日。ネウロは動けるほどに戻ってはいたが、魔力の回復具合は3割程度。体がなまったのでスポーツジムにリハビリに行きたいと言い、嫌がる弥子を無理やり連れて行く。ところがネウロの本当の目的はトレーニングマシンを使って弥子をのびのび虐待すること。そしてさらに事件に巻き込まれた弥子を救って謎も喰えた。
さあ、ネウロの活動再開だ。
ネウロと弥子はヴァイジャアとの戦いで重症を負って入院している吾代のお見舞いに行く。そこで笹塚と合流。近々警察は敵の重要拠点と思われる製薬会社の強制捜査を行うという。だが、笹塚は体調不良のため戦線離脱。病室を出て行く笹塚の姿に、弥子はどこか違和感を感じていた。
強制捜査の日、警察が突入する一方で、ネウロと弥子は警察とは別行動で会社内部へ侵入。そこで待ち受けるのは『五本指』のひとりジェニュイン。舞台で観客を魅了する元女優のジェニュインが支配するのは「空気」。群集を思うままに支配し操る能力がある。ネウロを調教してみせると言うジェニュインだが、ドSにかけてはネウロの方が上。ジェニュインはすべての権利を没収され手も足も出ない。
ネウロの戦術は、頭に魔力を直接注入し、人の心を折り敗北させるやり口。ネウロに頭を触られたジェニュインは「シックス」への忠誠心を奪われ屈服させられた。魔力を消費することなく、ネウロはジェニュインの奴隷化に成功した。
◇
ホテルで葛西とヴァイジャアに攻撃されたとき、笹塚は弥子に訊きます。「ネウロはいつも危険を承知で女の子にこんなことさせるのか。ならば、新しい血族と大差ない」と。でも弥子は確信を持った表情で答えます。「ネウロは人間を捨て石にして殺したりは絶対にしない。必ず開ける道を用意している。そこが新しい血族との違い」だと。その通りです。森の中で吾代たちが襲われたときも、「全身全霊に注意を払え。我が輩と違って貴様らは簡単に死ぬのだ」ドSな言い方だけど、あのネウロが弱い人間を気遣っています。ネウロの与えた策で結局全員無事だったわけだし。ネウロは弥子だけでなく人間を必ず守ってくれる。
この巻での伏線箇所は、弥子が感じた笹塚の違和感と、本城の態度。そして吾代が言った「新しい血族なんて本当に存在するのかよ」です。
それにしてもジェニュインの無駄なエロさは何なんだ。ネウロが唇を撫でたり首を抱えただけでエロく見えてしまう。弥子への日常的なスキンシップはエロくも何ともないのに。スポーツジムの弥子の水着姿に喜ぶ読者は何人いることやら。まぁ私はネウロのノースリーブのジャージ姿は大好きですけどね。ストールを巻いていたときの私服も似合ってました。髪の毛を束ねたほうがかっこいいと思います。
_convert_20121027230856.jpg)
いやいやそれよりも、超人的な体力のネウロには人間レベルのトレーニングマシンでは物足りないでしょうよ。指でバーベル回してますから。弥子が犯人に捕まったときも、弥子の監視役の魔界虫は完全に怠けてましたし。何しに来たんだ。やつら悪ふざけしに来てますね。でもここで喰った謎が、後で思えば地上での最後の食事になっていたのです。そう思えば来て正解…。いやもっと他になかったの?ネウロさん腹ペコよ、きっと。
この作品が全体的にうまくまとまっていると思えるのは、読者が疑問に思う点を何気につじつま合わせをしてあるところです。
まずは、ネウロが謎の気配を感知できるのなら、なぜ殺人事件が起きる可能性があると伝えに行かないのか。これは6巻でネウロが解説しています。「もし犯人がその場にいたとしても殺人を後日に延ばすだけ。悪意は簡単に消せない」と。ですよね。難解なトリックを実行しようとする人間なら、女子高生が止めにきたところで悪意は消えないでしょう。
それと、ネウロはいつも探偵事務所にいるのだから、敵はネウロをおびき寄せなくても事務所を攻撃すればいいじゃないか、という点。これも18巻で敵が言っています。「攻撃して逃げられ潜伏されるのを避けているから。決まった住所があるほうが監視しやすい」だそうです。確かに事務所に攻め込んでもネウロトラップにかかるのは目に見えてます。
あと、回復アイテムを持っているなら、最初からこの道具をつけてじっとしていればいいじゃないか。と弥子と同じく、私も思ったのですが、ネウロは言います。「貴様は点滴だけの病院生活で満たされるのか。我が輩の目的は究極の謎を食うことなのだ」ネウロの体を心配すれば、回復アイテムで魔力を補充するのも手かもしれません。でも人間がおいしいものを求めて、遠くのお店にわざわざ出かけて行列してでも食べたいと思うのと同じ。ネウロだって弱体してでも美味で新鮮な謎を喰いに行きたい。だからこそ地上にやってきた。まさに究極の食いしん坊。
ネウロの最終目標が究極の謎を喰うことならば、弥子の目標は「力が弱ってきたネウロの理不尽な命令に意地でも付き合ってやること」だそうです。けなげだね。
弥子はネウロの体を気遣っていても口に出しては言いません。対等な立場でいたいという思いからでしょうか。あやつり人形だった弥子が積極的にネウロに協力し力になろうとする兆しが見えてきたのは明らかです。
物語はいよいよ佳境へと入ります。
警察がテラの人間としての素性を調査するあいだ、ネウロは回復アイテムのストールを巻いて事務所で治癒に専念するのだった。
同じ頃、吾代は昔のなじみの気弱な少年と酒場で偶然会うが、彼は以前と違い、毒で簡単に人を殺せる人格に変わっていた。その少年もテロ集団『新しい血族』の一味。名前はヴァイジャア。
ネウロがストールを巻いている間は身動き出来ない。そのため、ネウロは吾代と弥子に少年のこれまでの足取りを調べさせた。
二人はヴァイジャアが過去に会ったとされる人物に会うため目的地に移動中、テラが過去に関わった人物を調査中の笹塚と鉢合わせ。笹塚が面会しようとした人物と、同一人物に行き当たったのだ。その重要参考人とは、本城だった。
本城の滞在するホテルで笹塚、吾代、弥子が事情聴取をしようとした時、葛西とヴァイジャアが現れ弥子たちを襲う。携帯電話でのネウロの指示で、証言者である本城を守ることを優先し、命からがらの脱出で逃げ切った。
笹塚たちが知りたがっている過去の情報は、日記に記し森に埋めてあると言う本城の証言で、笹塚たち一行は本城の案内で森へと急ぐ。だが資料探しにぐずついているうちに、敵に追いつかれ窮地に陥る。ヴァイジャアの植物を操る能力には勝ち目はなく絶体絶命の危機。しかしながらネウロが携帯で次々と作戦の指示を飛ばし、ヴァイジャアにダメージを与えることに成功。任務続行不可能と判断したヴァイジャアは自害した。
激闘のあと、森に埋めた資料を探そうとするが、本城は場所がわからないと言う。だがネウロの知恵で在り処を見つけ出す。資料は暗号化されていたが、またしても本城は読み方を忘れたと言う。これもまたネウロが簡単に読み解いた。
その資料には、『6年前、不動産業をしていたテラに自宅を売却した。』とあった。その跡地に出来たのは大手の製薬会社。おそらくその会社は『新しい血族』の巣窟になっている。ネウロは笹塚たち警察に、この会社を強制捜査するように言いつける。
事務所の椅子で回復に専念してから10日。ネウロは動けるほどに戻ってはいたが、魔力の回復具合は3割程度。体がなまったのでスポーツジムにリハビリに行きたいと言い、嫌がる弥子を無理やり連れて行く。ところがネウロの本当の目的はトレーニングマシンを使って弥子をのびのび虐待すること。そしてさらに事件に巻き込まれた弥子を救って謎も喰えた。
さあ、ネウロの活動再開だ。
ネウロと弥子はヴァイジャアとの戦いで重症を負って入院している吾代のお見舞いに行く。そこで笹塚と合流。近々警察は敵の重要拠点と思われる製薬会社の強制捜査を行うという。だが、笹塚は体調不良のため戦線離脱。病室を出て行く笹塚の姿に、弥子はどこか違和感を感じていた。
強制捜査の日、警察が突入する一方で、ネウロと弥子は警察とは別行動で会社内部へ侵入。そこで待ち受けるのは『五本指』のひとりジェニュイン。舞台で観客を魅了する元女優のジェニュインが支配するのは「空気」。群集を思うままに支配し操る能力がある。ネウロを調教してみせると言うジェニュインだが、ドSにかけてはネウロの方が上。ジェニュインはすべての権利を没収され手も足も出ない。
ネウロの戦術は、頭に魔力を直接注入し、人の心を折り敗北させるやり口。ネウロに頭を触られたジェニュインは「シックス」への忠誠心を奪われ屈服させられた。魔力を消費することなく、ネウロはジェニュインの奴隷化に成功した。
◇
ホテルで葛西とヴァイジャアに攻撃されたとき、笹塚は弥子に訊きます。「ネウロはいつも危険を承知で女の子にこんなことさせるのか。ならば、新しい血族と大差ない」と。でも弥子は確信を持った表情で答えます。「ネウロは人間を捨て石にして殺したりは絶対にしない。必ず開ける道を用意している。そこが新しい血族との違い」だと。その通りです。森の中で吾代たちが襲われたときも、「全身全霊に注意を払え。我が輩と違って貴様らは簡単に死ぬのだ」ドSな言い方だけど、あのネウロが弱い人間を気遣っています。ネウロの与えた策で結局全員無事だったわけだし。ネウロは弥子だけでなく人間を必ず守ってくれる。
この巻での伏線箇所は、弥子が感じた笹塚の違和感と、本城の態度。そして吾代が言った「新しい血族なんて本当に存在するのかよ」です。
それにしてもジェニュインの無駄なエロさは何なんだ。ネウロが唇を撫でたり首を抱えただけでエロく見えてしまう。弥子への日常的なスキンシップはエロくも何ともないのに。スポーツジムの弥子の水着姿に喜ぶ読者は何人いることやら。まぁ私はネウロのノースリーブのジャージ姿は大好きですけどね。ストールを巻いていたときの私服も似合ってました。髪の毛を束ねたほうがかっこいいと思います。
_convert_20121027230856.jpg)
いやいやそれよりも、超人的な体力のネウロには人間レベルのトレーニングマシンでは物足りないでしょうよ。指でバーベル回してますから。弥子が犯人に捕まったときも、弥子の監視役の魔界虫は完全に怠けてましたし。何しに来たんだ。やつら悪ふざけしに来てますね。でもここで喰った謎が、後で思えば地上での最後の食事になっていたのです。そう思えば来て正解…。いやもっと他になかったの?ネウロさん腹ペコよ、きっと。
この作品が全体的にうまくまとまっていると思えるのは、読者が疑問に思う点を何気につじつま合わせをしてあるところです。
まずは、ネウロが謎の気配を感知できるのなら、なぜ殺人事件が起きる可能性があると伝えに行かないのか。これは6巻でネウロが解説しています。「もし犯人がその場にいたとしても殺人を後日に延ばすだけ。悪意は簡単に消せない」と。ですよね。難解なトリックを実行しようとする人間なら、女子高生が止めにきたところで悪意は消えないでしょう。
それと、ネウロはいつも探偵事務所にいるのだから、敵はネウロをおびき寄せなくても事務所を攻撃すればいいじゃないか、という点。これも18巻で敵が言っています。「攻撃して逃げられ潜伏されるのを避けているから。決まった住所があるほうが監視しやすい」だそうです。確かに事務所に攻め込んでもネウロトラップにかかるのは目に見えてます。
あと、回復アイテムを持っているなら、最初からこの道具をつけてじっとしていればいいじゃないか。と弥子と同じく、私も思ったのですが、ネウロは言います。「貴様は点滴だけの病院生活で満たされるのか。我が輩の目的は究極の謎を食うことなのだ」ネウロの体を心配すれば、回復アイテムで魔力を補充するのも手かもしれません。でも人間がおいしいものを求めて、遠くのお店にわざわざ出かけて行列してでも食べたいと思うのと同じ。ネウロだって弱体してでも美味で新鮮な謎を喰いに行きたい。だからこそ地上にやってきた。まさに究極の食いしん坊。
ネウロの最終目標が究極の謎を喰うことならば、弥子の目標は「力が弱ってきたネウロの理不尽な命令に意地でも付き合ってやること」だそうです。けなげだね。
弥子はネウロの体を気遣っていても口に出しては言いません。対等な立場でいたいという思いからでしょうか。あやつり人形だった弥子が積極的にネウロに協力し力になろうとする兆しが見えてきたのは明らかです。
物語はいよいよ佳境へと入ります。
シックスが現れてから一ヶ月余、弥子の恐怖と不安は消えることはない。ネウロもまた、いずれ必ず訪れる魔力の大量消費前に、より多くの謎喰いをしようと焦りを見せるのだった。
そのころシックスはⅩの記憶から得た情報を元に、ネウロの弱点を握り、自らの制勝を確信していた。
ネウロの弱点とは『魔力が極限まで枯渇すれば、戦闘力、耐久力も加速度的に低下する』こと。シックスの忠実なる部下『五本指』を一人ずつ刺客としてネウロの元へ向かわせ、これを繰り返すことで人間並みに弱ったところを潰すのが、シックスの企みだ。
一方、弥子は河原で、四階建てのダンボールハウスを作り、そこで暮らす奇妙なおじさんと出会う。ホームレスと言いながらも裕福な暮らしぶりのおじさんと意気投合した弥子だが、彼がその後の事件に大きな影響を与える人物だとは、今はまだ分からずにいた。
この後、ネウロに呼び出されて事務所へ行くと、ネウロは怪訝な表情。「2日前にはあった謎が消えかけている」と言うのだ。
そのとき、テレビ画面にセレブの集まるイベント会場で、燃え盛る車がビルに突っ込み、巨大な「6」の炎の文字が描かれた映像が映し出された。これはシックスからの挑戦状。
まもなく大量殺人が起こる。ネウロは頭脳をフル回転させテロ現場を突き止め、ビルを飛び越え急行すると、そこにいたのは血族の一人DR。DRは堤防を爆破し、台風直撃の大雨を利用して大洪水を起こした。都会の真ん中で多くの人間や建物が濁流に流されていく。人間の死は謎の消失を意味している。目の前でエサ場が荒らされ呆然とするネウロに、DRはⅩの強化細胞を移植した腕で攻撃してくる。
しかし、魔人の怒りは頂点へ。まずは魔界能力で堤防を修復し、そしてついに本気になった魔人の凄まじい暴虐の嵐。息も絶え絶えのDRは濁流に流されていった。すぐさま『五本指』のひとり葛西に川から拾われるが、シックスの命令でその場で殺されたのだった。
魔力の大量使用で体力を消耗したネウロは、事務所に戻って弥子に腹いせの虐待をする余力もなくダウン。自然治癒しながら眠ってしまった。
多くの人間の死やネウロの弱体を目の当たりにした弥子は、だたやるせ無く、涙を流すしかないのだった。
一夜明け、洪水の排水ができず、街は大きな湖になっていた。早く排水しないと救助隊も入れない。そこに現れたのが河原で会ったおじさん。彼は複雑な計算式から排水箇所を割り出し、一気に水を海に流してみせた。自衛隊からも一目置かれるそのおじさんの名前を聞いた弥子は、予期せぬ驚きに言葉を失った。
おじさんの名は本城二三男。HAL事件で春川教授が犯行に至る要因となった本城刹那の父親だったのだ。「刹那の死因は病気ではない」「その元凶を憎んでも憎みきれん」と、娘を死に追いやった犯人を知っている様子。その言葉は弥子に疑念を抱かせるのだった。
そして、さらに次なる刺客テラがネウロの前に現れる。同時に球場に描かれた「6」の炎文字。再びシックスは挑戦状をよこした。
テラはネウロをテロ現場に誘い、高層マンションを倒壊させたり、1,000人の人質を地面に埋めたりしてネウロを挑発する。ネウロは多くの人間を守るため、魔界能力でビルの倒壊を防ぐが、大量の魔力を使い果たし衰弱してしまう。そこでネウロは充電池の髪飾りを噛み砕き、エネルギーを充てんし、反撃開始。
ネウロには奥の手があった。それは人間と協力すること。
ネウロは魔界虫を使い伝令し、側で戦いのありさまを盗み見ていた笹塚に加勢を求めた。二人が組むことで形勢逆転。警察にも顔がばれ後がないと悟ったテラは、用意していた自爆装置で自殺。
ネウロが正体を隠しながら、この先一人で戦い抜くのは無謀とも言える。そのためネウロは信用の置ける笹塚に魔人であることをばらし、警察を味方につけることで、より勝算をアップさせる戦略を実行したのだ。
◇
「久々だねー、昼間からネウロと謎探しに行くの」「さて、謎はこの食堂の中だ」「うん、入ろっか」
何、この会話。デートですか。
15巻はギャグ要素が多い巻でしたが、16巻の目を覆いたくなるような虐殺の連続。幸せに生きるため犯罪を犯そうとする人、幸せそうな家族。謎を作る人も作らない人も、容赦なく濁流に流されていく絵は、震災の後で見るといっそう悲しく辛くなります。絶対許すまい。悪しきシックス。
人間の私と同じ感情がネウロにもあったのか、あるいは、ただ食糧が荒らされたことへの恨みなのか。ここでは後者として描かれています。
しかし二本目の『五本指』テラとの対決のとき、敵が言います。「人間は百億近くいる。目の前の千人を、いつか謎を作るかもしれないというあやふやな理由で助けるために、力を使い果たす。ネウロの欠点は人間を見捨てられないことだ」と。確かにその通りです。ただ謎を食うために地上に来たのなら、殺されそうな人間は見捨てて、犯罪者の多い場所へ行けばいいのです。でもそれができないのがネウロ。目の前に謎がなくても、人間を助けてしまう。ネウロ自身も気づいていないようですが、長く弥子と一緒にいて育った感情ではないでしょうか。『人情』というやつです。
16巻のDR虐待シーンは、ドS男好きの私のお気に入りです。一週分すべて使っての暴挙の数々。これでこそネウロです。
今年は雨が多かった。だからダムが危険水位になり放水する、という設定のために、これまでの話の流れで、雨のシーンを何度か取り入れていた作者さんの準備には感心します。突然雨の日を書いて、「今年は雨が多い」としたら不自然ですからね。
それと、作者さんが「漫画で書いたことが実際に起こる」と言っていましたが、まさか水に浸かった多くの建物や大勢の死者、これが現実になってしまうとは。考えると怖い。この作者さん予言者ですか。
また、16巻でシックスが「人間の脳は一度折れ目が付いたら、どう伸ばしても消えない」と言っています。これはあとでネウロと考え方の違いとして使われます。ここは伏線ですね。
テラとの戦いで、テラが過去を回想して話すときに出た『箱』という言葉に、ネウロは反応しています。作中で箱はよく出てくるので、私は特にピンとこなかったのですが、このときネウロは重大なことに気づきました。これが判明するのは20巻です。これも伏線。
バレンタイン大作戦編で、ネウロがチョコに仕込んだ毒は3個。当たった人は2人。
すべて配ったのか?と聞くネウロに、弥子がさりげなく渡すチョコ。ここも好きな場面です。アホな私は「で? 結局、もう一つの毒チョコどこいった?」と、理解できていませんでした……。
なんやかんやで仲のいい二人。いいコンビです。
そのころシックスはⅩの記憶から得た情報を元に、ネウロの弱点を握り、自らの制勝を確信していた。
ネウロの弱点とは『魔力が極限まで枯渇すれば、戦闘力、耐久力も加速度的に低下する』こと。シックスの忠実なる部下『五本指』を一人ずつ刺客としてネウロの元へ向かわせ、これを繰り返すことで人間並みに弱ったところを潰すのが、シックスの企みだ。
一方、弥子は河原で、四階建てのダンボールハウスを作り、そこで暮らす奇妙なおじさんと出会う。ホームレスと言いながらも裕福な暮らしぶりのおじさんと意気投合した弥子だが、彼がその後の事件に大きな影響を与える人物だとは、今はまだ分からずにいた。
この後、ネウロに呼び出されて事務所へ行くと、ネウロは怪訝な表情。「2日前にはあった謎が消えかけている」と言うのだ。
そのとき、テレビ画面にセレブの集まるイベント会場で、燃え盛る車がビルに突っ込み、巨大な「6」の炎の文字が描かれた映像が映し出された。これはシックスからの挑戦状。
まもなく大量殺人が起こる。ネウロは頭脳をフル回転させテロ現場を突き止め、ビルを飛び越え急行すると、そこにいたのは血族の一人DR。DRは堤防を爆破し、台風直撃の大雨を利用して大洪水を起こした。都会の真ん中で多くの人間や建物が濁流に流されていく。人間の死は謎の消失を意味している。目の前でエサ場が荒らされ呆然とするネウロに、DRはⅩの強化細胞を移植した腕で攻撃してくる。
しかし、魔人の怒りは頂点へ。まずは魔界能力で堤防を修復し、そしてついに本気になった魔人の凄まじい暴虐の嵐。息も絶え絶えのDRは濁流に流されていった。すぐさま『五本指』のひとり葛西に川から拾われるが、シックスの命令でその場で殺されたのだった。
魔力の大量使用で体力を消耗したネウロは、事務所に戻って弥子に腹いせの虐待をする余力もなくダウン。自然治癒しながら眠ってしまった。
多くの人間の死やネウロの弱体を目の当たりにした弥子は、だたやるせ無く、涙を流すしかないのだった。
一夜明け、洪水の排水ができず、街は大きな湖になっていた。早く排水しないと救助隊も入れない。そこに現れたのが河原で会ったおじさん。彼は複雑な計算式から排水箇所を割り出し、一気に水を海に流してみせた。自衛隊からも一目置かれるそのおじさんの名前を聞いた弥子は、予期せぬ驚きに言葉を失った。
おじさんの名は本城二三男。HAL事件で春川教授が犯行に至る要因となった本城刹那の父親だったのだ。「刹那の死因は病気ではない」「その元凶を憎んでも憎みきれん」と、娘を死に追いやった犯人を知っている様子。その言葉は弥子に疑念を抱かせるのだった。
そして、さらに次なる刺客テラがネウロの前に現れる。同時に球場に描かれた「6」の炎文字。再びシックスは挑戦状をよこした。
テラはネウロをテロ現場に誘い、高層マンションを倒壊させたり、1,000人の人質を地面に埋めたりしてネウロを挑発する。ネウロは多くの人間を守るため、魔界能力でビルの倒壊を防ぐが、大量の魔力を使い果たし衰弱してしまう。そこでネウロは充電池の髪飾りを噛み砕き、エネルギーを充てんし、反撃開始。
ネウロには奥の手があった。それは人間と協力すること。
ネウロは魔界虫を使い伝令し、側で戦いのありさまを盗み見ていた笹塚に加勢を求めた。二人が組むことで形勢逆転。警察にも顔がばれ後がないと悟ったテラは、用意していた自爆装置で自殺。
ネウロが正体を隠しながら、この先一人で戦い抜くのは無謀とも言える。そのためネウロは信用の置ける笹塚に魔人であることをばらし、警察を味方につけることで、より勝算をアップさせる戦略を実行したのだ。
◇
「久々だねー、昼間からネウロと謎探しに行くの」「さて、謎はこの食堂の中だ」「うん、入ろっか」
何、この会話。デートですか。
15巻はギャグ要素が多い巻でしたが、16巻の目を覆いたくなるような虐殺の連続。幸せに生きるため犯罪を犯そうとする人、幸せそうな家族。謎を作る人も作らない人も、容赦なく濁流に流されていく絵は、震災の後で見るといっそう悲しく辛くなります。絶対許すまい。悪しきシックス。
人間の私と同じ感情がネウロにもあったのか、あるいは、ただ食糧が荒らされたことへの恨みなのか。ここでは後者として描かれています。
しかし二本目の『五本指』テラとの対決のとき、敵が言います。「人間は百億近くいる。目の前の千人を、いつか謎を作るかもしれないというあやふやな理由で助けるために、力を使い果たす。ネウロの欠点は人間を見捨てられないことだ」と。確かにその通りです。ただ謎を食うために地上に来たのなら、殺されそうな人間は見捨てて、犯罪者の多い場所へ行けばいいのです。でもそれができないのがネウロ。目の前に謎がなくても、人間を助けてしまう。ネウロ自身も気づいていないようですが、長く弥子と一緒にいて育った感情ではないでしょうか。『人情』というやつです。
16巻のDR虐待シーンは、ドS男好きの私のお気に入りです。一週分すべて使っての暴挙の数々。これでこそネウロです。
今年は雨が多かった。だからダムが危険水位になり放水する、という設定のために、これまでの話の流れで、雨のシーンを何度か取り入れていた作者さんの準備には感心します。突然雨の日を書いて、「今年は雨が多い」としたら不自然ですからね。
それと、作者さんが「漫画で書いたことが実際に起こる」と言っていましたが、まさか水に浸かった多くの建物や大勢の死者、これが現実になってしまうとは。考えると怖い。この作者さん予言者ですか。
また、16巻でシックスが「人間の脳は一度折れ目が付いたら、どう伸ばしても消えない」と言っています。これはあとでネウロと考え方の違いとして使われます。ここは伏線ですね。
テラとの戦いで、テラが過去を回想して話すときに出た『箱』という言葉に、ネウロは反応しています。作中で箱はよく出てくるので、私は特にピンとこなかったのですが、このときネウロは重大なことに気づきました。これが判明するのは20巻です。これも伏線。
バレンタイン大作戦編で、ネウロがチョコに仕込んだ毒は3個。当たった人は2人。
すべて配ったのか?と聞くネウロに、弥子がさりげなく渡すチョコ。ここも好きな場面です。アホな私は「で? 結局、もう一つの毒チョコどこいった?」と、理解できていませんでした……。
なんやかんやで仲のいい二人。いいコンビです。
ネウロへの借金返済のためバイト探しに奔走する弥子。そこで偶然「Ⅹ」のパートナーのアイと遭遇する。アイの正体を知らない弥子は、見ず知らずの親切な女性と思い込んだままアイの手助けで大金を得て、借金地獄から開放される。アイは弥子の適応力と度胸に着目し、ひとまずその場を去る。
その後事務所前で吾代と笹塚が鉢合わせ。血の気の多い元ヤクザの吾代と冷静沈着の刑事笹塚は反りが合わず一触即発のムードに。
その頃事務所内では幼女睦月が弥子たちの帰りを待っていた。おじいちゃんが命を狙われているので身辺調査をして欲しいと言う。謎の気配を察してネウロは捜査開始。だが翌日老人は殺されてしまった。
警察とネウロに吾代も加わって捜査が進み犯人を追い詰めるも、睦月が人質に取られてしまう。危険な状況だがネウロは「我が輩が助ける必要は無い」と。なぜなら、水と油だった吾代と笹塚が協力し合い連係プレーで見事犯人を捕らえたからだ。
ネウロは言う「人間にはそれぞれ最良の使い方がある」得意分野を活用すれば魔力を浪費しなくても謎を喰うことができるのだと。これまで人間を下等動物のようにしか見ていなかったネウロに、人間への興味と信頼が育ってきた。その変化を弥子は感じ取っていた。
一方、捜査途中で情報屋から笹塚の過去を聞かされた吾代は不審の念を抱くのだった。
その頃、あの男も動き始めていた。
怪盗「Ⅹ」はHALのデータをコピーし脳に取り込むことで、電子ドラッグの性能を手に入れた。標的はネウロ。
そうとは知らないネウロと弥子は、毒ガスが発生した山村に足を踏み入れていた。そこで殺人事件が発生した。けれども喜ぶはずのネウロのテンションが低い。この謎は違和感があるというのだ。
いつものように謎解きを始めようとした瞬間、犯人が超人的な力で飛び去った。犯人は「Ⅹ」が用意した刺客だったのだ。ネウロは混乱する弥子を置いて、犯人を追いかける。逃げられた上に謎が食えないのはプライドが許せない。だが犯人には別の目的がある。ネウロが油断して弥子から目を離した隙を狙って、弥子が「Ⅹ」に連れ去られてしまった。
拉致された弥子が目を覚ますと目の前に「Ⅹ」とアイがいた。「Ⅹ」と出会った当時は名前を聞いただけで震え上がっていた弥子だったが、「Ⅹ」の天然で無邪気な性格をじかに目にしたせいか、自然に話しができるほどになってきた。
「今度こそ自分の正体を解明して元に戻る」という「Ⅹ」に、弥子は単純に疑問を投げかけた。「今の自分が本当の正体じゃないの?」と。真意が伝わらなかったのか、カッとなった「Ⅹ」に電子ドラッグを見せられ弥子は洗脳されてしまう。だがアイは弥子の言葉に心を揺り動かされていた。「Ⅹの正体を明かすのはネウロではなく弥子なのでは」と。
一方、警察でも動きがあった。刑事笛吹の古い友人で国際捜査員のアンドリュー・シクソンが怪盗「Ⅹ」を逮捕するために来日した。アンドリューには見聞きしたことを瞬時に記憶する能力がある。彼が言うには、国際指名手配中の特殊工作員・イミナが「Ⅹ」と行動を共にしている可能性があるのだと。さっそく笹塚と調査に出かける。
数年前、イミナは搭乗した飛行機内で毒ガスを仕込む任務を遂行中、隣に座った人物が次々と「変わっていった」のを見て驚愕する。その人物こそ怪盗「Ⅹ」。限界のある人間と絶望的な世界から自己逃避していたイミナは、限界を超える「Ⅹ」の存在を見知り、彼の中身を自分も確かめたいと切望し「Ⅹ」の従者となった。その日から自らをアイと名乗るようになった。
弥子が連れ去られた3日後、ネウロは「Ⅹ」の残したメッセージカードから弥子の拉致現場を突き止める。同時にアンドリューと笹塚も場所を探り当て急行する。アジトはなんと警視庁本部の地下。
現れたネウロを「Ⅹ」は弥子に化けて出迎える。加えて電子ドラッグで洗脳し「Ⅹ」の動きとシンクロさせた弥子と一緒に、『二人の弥子』で攻撃してきた。「俺たちの見分けがつくかな」と自信満々で攻めてくる「Ⅹ」だが、ネウロは簡単に見破った。その上HALの謎を喰って満腹のため至近距離からバズーカを撃たれても傷ひとつ負わない。
ネウロからの厳しい懲らしめを加えられ深手を負った「Ⅹ」は屋上へと逃げる。駆けつけた笹塚たちと洗脳が解けた弥子とネウロで後を追った。
ヘリで迎えに来たアイと逃げる手はずだった。だがしかし、「Ⅹ」がヘリに飛び乗った瞬間、操縦席のアイは頭部を撃たれて即死。ヘリは撃墜する。銃を撃ったのはアンドリュー。さっきまで仲間だと思っていたアンドリューが顔の皮を剥ぐと、中から邪悪な圧力を放つ男が現れた。男は自らを『新しい血族』の先端にいる者、「シックス」と名乗った。
「シックス」は「Ⅹ」に向かい「名も無き我が子よ」と言った。シックスの口から「Ⅹ」の正体が明かされる。
「Ⅹ」とは「シックス」のクローンから改造した実験体。生後5年を強化ガラスの中で成長させ、変異細胞の経過観察のデータを取るために社会に出した。それを今、回収に来たのだという。
あれほど知りたかった自分のルーツ。過去の思い出や無くした記憶など元々無かったのだ。茫然自失の「Ⅹ」を連れて、「シックス」は高速で飛び込んできた無人戦闘機に素手で捕まり逃走した。想像を絶する出来事に警察は成すすべも無い。
弥子はついさっき誘拐されたと言うのに、「Ⅹ」を心配する。ネウロは人間でも魔人でもない「シックス」が何者なのか、知りたがっていた。
そんな時、ネウロへ「シックス」からお茶会のご招待。そこで「シックス」は『定向進化』について説明する。 動物の交配で行われる一つの方向へ突き進む定向進化。これと同じことが7000年前、一族の中で「悪意の定向進化」として進められた。こうして強い脳と悪意を持つ血族が出来上がった。それが『新しい血族』。自分はその頂点にいるのだと。世界には100人の血族がいる。血族が栄えるためにそれ以外の人間を殺すのが目的なのだという。
「シックス」が人間の数を減らせばネウロの食料である謎も減る。それは魔人の本能として許せない。つまりネウロと「シックス」は敵対関係にある。「シックス」はネウロの目の前で大勢の人間を殺して見せた。ネウロは強い不快感を表わす。これまで誰かに本気の敵意を表わしたことの無いネウロが始めて見せる嫌悪の表情。
人間にとっても有害な悪の存在「シックス」が、これからどんな「病気」を撒き散らすのか…。
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◇
アルバイト探しのときにアイが弥子に言ったアドバイス「可能性無き絶望ほど怖ろしいことはないのだから」。これは自分の過去を振り返って出た言葉なのでしょうか。それと弥子が言った「私を見る視線はネウロのものと似ていた」これはつまり弥子の可能性に期待する目。アイは弥子に何か感じるものがあったようです。
アルバイト大作戦編はただのギャグの回と思いきや、後々に影響する伏線があちこちに張られていました。
弥子とぶつかったときに散らかった荷物。これも後で大事な記憶として使われます。それとアイが気づいた弥子に付いている虫。ネウロが弥子を監視するために付けた魔界虫です。これは噛み切り美容師のときにもいました。ネウロは弥子が側にいないときにも目が届くようにしている。ただし今回の毒ガスの山村では敵を追うのに夢中で察知が遅れたのか、魔界虫は飛んでいたのにネウロは弥子への注意を逸らしてしまった。でも見捨てず救出しに行くところを見るとネウロにとって弥子は大事なんだなぁと。「いまさら別の奴隷を探すのは面倒だから」という理由じゃないと信じたい。
それと、吾代と笹塚の出会いも意味のあるもの。笹塚の隠された本性を知る人物として吾代は後に重要な役目となります。玩具メーカーの老社長殺人事件で笹塚が言った復讐についての意味深な発言。これに反応したのも吾代でした。少しずつ読者にヒントを与えてくれています。
そして驚くべき伏線はアイことイミナが飛行機で会った「Ⅹ」の姿。次々に違う人間に代わっていく途中で現れた少女は、実は「Ⅹ」の本当の姿だったのです。自分の本当の正体がわからなくて探している「Ⅹ」。自分もそれが知りたくて行動を共にするアイ。ところが二人が気がつかないうちに、すでに目にしていたという。22巻の回想で「Ⅹ」が「どの顔で固定すればいいか」とアイに聞いたとき、一瞬少女の姿になったのに、アイは「いつもの顔でいい」と戻させています。これも悲しい運命とでも言うやつですか。
弥子が「Ⅹ」の正体を知るきっかけになるのではと、期待したまま死んでしまったアイさんですが、もうあなたは本当の「Ⅹ」に会っていますと教えてあげたい。
けれどもアイの期待もあながち間違っていません。「Ⅹ」の正体を知らされたのはシックスからですが、アイの予想通り、ある意味「Ⅹ」の本当を取り戻すきっかけを作ったのは弥子。これは最終回近くで出てくる話ですが、このアイの予想も伏線。
アイがあっさり死んでしまったのはショックでした。敵とはいえ印象的なキャラなので。でももっと衝撃的なのはシックスが手下にノコギリで自分の腹を切って自殺しろと命令する場面。画では飛び散る血とギコギコの擬音だけなのに、嫌な想像が掻き立てられ、こいつの恐ろしさが強調されます。
そしてシックスとネウロのドSサミット。犯人の話になど興味がなかったネウロが、シックスの御託にじっと聞き入っています。ネウロの「プライドを取り戻せ人間どもよ」かっこいい台詞ですが、これは強要されて殺人をするのではなく自分の意思でやれってこと。いや、どうなの。これって…。
去り際にネウロがシックスに「Ⅹはどうしている」と聞いています。これは弥子が「Ⅹ」を心配したのを受けて代わりに聞いてあげたのでしょうか。はっきりと変化が現れるネウロの人間的な感情。
最後のページの「容赦なく人が殺されるだろう。私の身近な人ですら例外でなく」の背景に頭を打たれる人の絵。これは一体誰のことなのか。まさかあの人とは、この時点では思いませんでした。
悪の人間と人間を守る魔人の闘いは、いよいよ始まります。
その後事務所前で吾代と笹塚が鉢合わせ。血の気の多い元ヤクザの吾代と冷静沈着の刑事笹塚は反りが合わず一触即発のムードに。
その頃事務所内では幼女睦月が弥子たちの帰りを待っていた。おじいちゃんが命を狙われているので身辺調査をして欲しいと言う。謎の気配を察してネウロは捜査開始。だが翌日老人は殺されてしまった。
警察とネウロに吾代も加わって捜査が進み犯人を追い詰めるも、睦月が人質に取られてしまう。危険な状況だがネウロは「我が輩が助ける必要は無い」と。なぜなら、水と油だった吾代と笹塚が協力し合い連係プレーで見事犯人を捕らえたからだ。
ネウロは言う「人間にはそれぞれ最良の使い方がある」得意分野を活用すれば魔力を浪費しなくても謎を喰うことができるのだと。これまで人間を下等動物のようにしか見ていなかったネウロに、人間への興味と信頼が育ってきた。その変化を弥子は感じ取っていた。
一方、捜査途中で情報屋から笹塚の過去を聞かされた吾代は不審の念を抱くのだった。
その頃、あの男も動き始めていた。
怪盗「Ⅹ」はHALのデータをコピーし脳に取り込むことで、電子ドラッグの性能を手に入れた。標的はネウロ。
そうとは知らないネウロと弥子は、毒ガスが発生した山村に足を踏み入れていた。そこで殺人事件が発生した。けれども喜ぶはずのネウロのテンションが低い。この謎は違和感があるというのだ。
いつものように謎解きを始めようとした瞬間、犯人が超人的な力で飛び去った。犯人は「Ⅹ」が用意した刺客だったのだ。ネウロは混乱する弥子を置いて、犯人を追いかける。逃げられた上に謎が食えないのはプライドが許せない。だが犯人には別の目的がある。ネウロが油断して弥子から目を離した隙を狙って、弥子が「Ⅹ」に連れ去られてしまった。
拉致された弥子が目を覚ますと目の前に「Ⅹ」とアイがいた。「Ⅹ」と出会った当時は名前を聞いただけで震え上がっていた弥子だったが、「Ⅹ」の天然で無邪気な性格をじかに目にしたせいか、自然に話しができるほどになってきた。
「今度こそ自分の正体を解明して元に戻る」という「Ⅹ」に、弥子は単純に疑問を投げかけた。「今の自分が本当の正体じゃないの?」と。真意が伝わらなかったのか、カッとなった「Ⅹ」に電子ドラッグを見せられ弥子は洗脳されてしまう。だがアイは弥子の言葉に心を揺り動かされていた。「Ⅹの正体を明かすのはネウロではなく弥子なのでは」と。
一方、警察でも動きがあった。刑事笛吹の古い友人で国際捜査員のアンドリュー・シクソンが怪盗「Ⅹ」を逮捕するために来日した。アンドリューには見聞きしたことを瞬時に記憶する能力がある。彼が言うには、国際指名手配中の特殊工作員・イミナが「Ⅹ」と行動を共にしている可能性があるのだと。さっそく笹塚と調査に出かける。
数年前、イミナは搭乗した飛行機内で毒ガスを仕込む任務を遂行中、隣に座った人物が次々と「変わっていった」のを見て驚愕する。その人物こそ怪盗「Ⅹ」。限界のある人間と絶望的な世界から自己逃避していたイミナは、限界を超える「Ⅹ」の存在を見知り、彼の中身を自分も確かめたいと切望し「Ⅹ」の従者となった。その日から自らをアイと名乗るようになった。
弥子が連れ去られた3日後、ネウロは「Ⅹ」の残したメッセージカードから弥子の拉致現場を突き止める。同時にアンドリューと笹塚も場所を探り当て急行する。アジトはなんと警視庁本部の地下。
現れたネウロを「Ⅹ」は弥子に化けて出迎える。加えて電子ドラッグで洗脳し「Ⅹ」の動きとシンクロさせた弥子と一緒に、『二人の弥子』で攻撃してきた。「俺たちの見分けがつくかな」と自信満々で攻めてくる「Ⅹ」だが、ネウロは簡単に見破った。その上HALの謎を喰って満腹のため至近距離からバズーカを撃たれても傷ひとつ負わない。
ネウロからの厳しい懲らしめを加えられ深手を負った「Ⅹ」は屋上へと逃げる。駆けつけた笹塚たちと洗脳が解けた弥子とネウロで後を追った。
ヘリで迎えに来たアイと逃げる手はずだった。だがしかし、「Ⅹ」がヘリに飛び乗った瞬間、操縦席のアイは頭部を撃たれて即死。ヘリは撃墜する。銃を撃ったのはアンドリュー。さっきまで仲間だと思っていたアンドリューが顔の皮を剥ぐと、中から邪悪な圧力を放つ男が現れた。男は自らを『新しい血族』の先端にいる者、「シックス」と名乗った。
「シックス」は「Ⅹ」に向かい「名も無き我が子よ」と言った。シックスの口から「Ⅹ」の正体が明かされる。
「Ⅹ」とは「シックス」のクローンから改造した実験体。生後5年を強化ガラスの中で成長させ、変異細胞の経過観察のデータを取るために社会に出した。それを今、回収に来たのだという。
あれほど知りたかった自分のルーツ。過去の思い出や無くした記憶など元々無かったのだ。茫然自失の「Ⅹ」を連れて、「シックス」は高速で飛び込んできた無人戦闘機に素手で捕まり逃走した。想像を絶する出来事に警察は成すすべも無い。
弥子はついさっき誘拐されたと言うのに、「Ⅹ」を心配する。ネウロは人間でも魔人でもない「シックス」が何者なのか、知りたがっていた。
そんな時、ネウロへ「シックス」からお茶会のご招待。そこで「シックス」は『定向進化』について説明する。 動物の交配で行われる一つの方向へ突き進む定向進化。これと同じことが7000年前、一族の中で「悪意の定向進化」として進められた。こうして強い脳と悪意を持つ血族が出来上がった。それが『新しい血族』。自分はその頂点にいるのだと。世界には100人の血族がいる。血族が栄えるためにそれ以外の人間を殺すのが目的なのだという。
「シックス」が人間の数を減らせばネウロの食料である謎も減る。それは魔人の本能として許せない。つまりネウロと「シックス」は敵対関係にある。「シックス」はネウロの目の前で大勢の人間を殺して見せた。ネウロは強い不快感を表わす。これまで誰かに本気の敵意を表わしたことの無いネウロが始めて見せる嫌悪の表情。
人間にとっても有害な悪の存在「シックス」が、これからどんな「病気」を撒き散らすのか…。
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◇
アルバイト探しのときにアイが弥子に言ったアドバイス「可能性無き絶望ほど怖ろしいことはないのだから」。これは自分の過去を振り返って出た言葉なのでしょうか。それと弥子が言った「私を見る視線はネウロのものと似ていた」これはつまり弥子の可能性に期待する目。アイは弥子に何か感じるものがあったようです。
アルバイト大作戦編はただのギャグの回と思いきや、後々に影響する伏線があちこちに張られていました。
弥子とぶつかったときに散らかった荷物。これも後で大事な記憶として使われます。それとアイが気づいた弥子に付いている虫。ネウロが弥子を監視するために付けた魔界虫です。これは噛み切り美容師のときにもいました。ネウロは弥子が側にいないときにも目が届くようにしている。ただし今回の毒ガスの山村では敵を追うのに夢中で察知が遅れたのか、魔界虫は飛んでいたのにネウロは弥子への注意を逸らしてしまった。でも見捨てず救出しに行くところを見るとネウロにとって弥子は大事なんだなぁと。「いまさら別の奴隷を探すのは面倒だから」という理由じゃないと信じたい。
それと、吾代と笹塚の出会いも意味のあるもの。笹塚の隠された本性を知る人物として吾代は後に重要な役目となります。玩具メーカーの老社長殺人事件で笹塚が言った復讐についての意味深な発言。これに反応したのも吾代でした。少しずつ読者にヒントを与えてくれています。
そして驚くべき伏線はアイことイミナが飛行機で会った「Ⅹ」の姿。次々に違う人間に代わっていく途中で現れた少女は、実は「Ⅹ」の本当の姿だったのです。自分の本当の正体がわからなくて探している「Ⅹ」。自分もそれが知りたくて行動を共にするアイ。ところが二人が気がつかないうちに、すでに目にしていたという。22巻の回想で「Ⅹ」が「どの顔で固定すればいいか」とアイに聞いたとき、一瞬少女の姿になったのに、アイは「いつもの顔でいい」と戻させています。これも悲しい運命とでも言うやつですか。
弥子が「Ⅹ」の正体を知るきっかけになるのではと、期待したまま死んでしまったアイさんですが、もうあなたは本当の「Ⅹ」に会っていますと教えてあげたい。
けれどもアイの期待もあながち間違っていません。「Ⅹ」の正体を知らされたのはシックスからですが、アイの予想通り、ある意味「Ⅹ」の本当を取り戻すきっかけを作ったのは弥子。これは最終回近くで出てくる話ですが、このアイの予想も伏線。
アイがあっさり死んでしまったのはショックでした。敵とはいえ印象的なキャラなので。でももっと衝撃的なのはシックスが手下にノコギリで自分の腹を切って自殺しろと命令する場面。画では飛び散る血とギコギコの擬音だけなのに、嫌な想像が掻き立てられ、こいつの恐ろしさが強調されます。
そしてシックスとネウロのドSサミット。犯人の話になど興味がなかったネウロが、シックスの御託にじっと聞き入っています。ネウロの「プライドを取り戻せ人間どもよ」かっこいい台詞ですが、これは強要されて殺人をするのではなく自分の意思でやれってこと。いや、どうなの。これって…。
去り際にネウロがシックスに「Ⅹはどうしている」と聞いています。これは弥子が「Ⅹ」を心配したのを受けて代わりに聞いてあげたのでしょうか。はっきりと変化が現れるネウロの人間的な感情。
最後のページの「容赦なく人が殺されるだろう。私の身近な人ですら例外でなく」の背景に頭を打たれる人の絵。これは一体誰のことなのか。まさかあの人とは、この時点では思いませんでした。
悪の人間と人間を守る魔人の闘いは、いよいよ始まります。
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Re: 探偵物
朔の月(さくのつき) 金田一少年は私も好きで全巻読みました。ネウロは金田一に比べると謎解きはB級ですけどね。
ちなみに、金田一少年の決まり台詞は「謎はすべて解けた」。ネウロは「謎はもう我が輩の舌の上だ」です。
探偵物
吾妻 玲二 探偵系は結構自分好きですねw
金田一少年特に好きでしたw
朔の月(さくのつき) 金田一少年は私も好きで全巻読みました。ネウロは金田一に比べると謎解きはB級ですけどね。
ちなみに、金田一少年の決まり台詞は「謎はすべて解けた」。ネウロは「謎はもう我が輩の舌の上だ」です。
探偵物
吾妻 玲二 探偵系は結構自分好きですねw
金田一少年特に好きでしたw
電人HALを追ってネットの世界へと潜り込んだネウロだが、3体の援護プログラム『スフィンクス』に攻撃され押し戻された。しかしネウロは諦めない。それほどの大容量のデータを送り込ませるにはスーパーコンピューターが必要。国内のスパコンは数が少なく場所も限られているので、HALにコントロールされているスパコンを探し出して壊せばいい、というのがネウロの見解。
そして、まず二つのスパコンを見つけ出し破壊に成功した。そこでHALから言われた「まるで無力な操り人形」の言葉に弥子は傷つく。私が行かなくてもネウロ一人で敵を倒すことはできる。私はいる意味が無いと……。
同じ頃、元ハッカーの刑事篚口結也は、電子ドラッグに対抗する特効薬のプログラムの制作を完了させていた。
中毒患者たちが電子ドラッグにアクセスすると、そのページをハッキングしワクチンを脳へ刷り込み元通りにする手はずだった。ところがそのすべてをHALは計算済み。中毒患者たちはワクチンの反転映像を見せられても、もう一度反転して受け入れるようにプログラムされていた。篚口の特効薬作戦は失敗し、逆に篚口が電子ドラッグ映像を見せられ、HALに支配されてしまった。
ネウロたちが3つ目のスパコンが置かれた場所へ行くと、そこで待ち受けていたのは篚口。篚口はスパコンをトレーラーに乗せ、山奥へと逃げる。後を追うネウロだが、これは篚口の巧妙な罠。ネウロは車ごと谷底へ落ちてしまう。弥子の救出を優先したネウロはかなりのダメージを負い絶体絶命のピンチ。
ドラッグに冒された篚口は、狂乱しネウロを殺そうとむきになっている。しかし弥子は見抜いていた。篚口が操られていないことを。洗脳されている人間は罪の意識が無い。でも篚口には罪悪感があるからだと。
弥子のお陰で冷静になれた篚口。ネウロが3つ目のスパコンを破壊したが、時はすでに遅し。HALは次なる手段を用意していた。
HALは東京湾に入港した原子力空母を乗っ取り支配していた。さらに政府に世界中のスパコンを空母に運び込ませるように要求した。
急いでネウロが再びネットの世界へ侵入するも、直前にHALは新しいスフィンクスをインストールさせていた。しかもHALのいる奥へは「パスワード入力」の壁があり、到達できない。
そのとき、ネウロが血を吐き倒れた。謎を食えず空腹の上に、これまでに受けた傷のダメージと魔力の大量使用で体力の限界に来ていたのだ。
ネウロは弥子に指令を出す。自然治癒で回復するまでの3日間で、弥子がパスワードを解読しろと。重要なパスワードほど制作者の感情に沿って設定される。だが魔人のネウロには人間の心情は読み取れない。そのため弥子がパスワードを解くしかないのだ。一度でも間違えれば原子力空母が破壊され、首都圏は放射能の海になる。HALはヒントを与えた。パスワードは私の目的そのものだと。
弥子にできてネウロにできないこと。それは人間の心を深く知ること。弥子はネウロの期待に応えるため、世界を救うため、私がやるしかないと決意しパスワード解読のための資料集めに走る。
一方、ネウロは早坂兄弟にある物を調達させ、空母に乗り込む準備をしていた。
弥子は、たくさんの資料の中にある春川教授の講義映像から、何かを感じ取りひとつの推測を浮上させる。そして3日目の朝、これまでに掴んだヒントからある一つの答えを導き出した。
早坂の用意した軍用ヘリで空母に乗り込むネウロと弥子。さっそくネウロがネットの世界へと潜り込みHALと向かい合う。同時に弥子はパスワードを入力。解読は成功したのだ。
ネウロとHALを隔てていた壁は取り除かれ、ネウロは大量で良質の謎を喰った。狂喜して兵隊たちを倒し暴れまわる片方で、すべてを封印され動きを止められたHALが現れ弥子に問う。どうやってパスワードを解読したのかと。弥子は語る。空母を乗っ取り世界中のスパコンを手に入れ電子ドラッグで兵隊を洗脳し、そこまでしてやり遂げたいHALの目的とは何かを。 ――それは「ある人物を0から作り出すこと」
HALは春川の過去を語り始めた。
数年前、春川は脳に難病を抱えた患者の治療施設に勤めていた。被験者本城刹那は、脳のコントロールを失い脳細胞が破壊される前例の無い病に侵されていた。春川は彼女の治療に全霊を尽くしていたが、その甲斐もなく彼女は息を引き取った。
絶望した春川はデジタル世界で刹那を構築させる研究に情熱を注いだ。しかし、何年かかっても何度計算を繰り返してもとても足りない。生身の人間である春川が生きている内には成し遂げられない。そう悟ったからHALは春川を殺したのだと。HALでさえ世界中のスパコンで何百年も計算し続けても刹那を再構築するのは未知数だ。
だがネウロに破壊された今となればHALの計画も続行不可能。外部の人間が消去するしかない。その役目を弥子にやれと命じる。HALは電子ドラッグのワクチンと消去画面を弥子に見せる。HALの苦しみが理解でき同情する弥子は一度は拒否するも、震えながらエンターキーを押すと、HALは少しずつ消え0に近づいていく。その時、HALが見たものは……。
大切な人を失う辛さが痛いほどわかる弥子は、涙が止まらない。そこへ機嫌よく現れるネウロ。弥子の活躍を称え「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」というネウロの手を払いのけ、「あんたにはわからない」と弥子は声を張り上げる。ネウロは気にすることもなく、「日付も変わった。帰るぞ」とひと言。嵐のような数週間は終わった。
1週間後、日常が戻った弥子とネウロは、中毒者に襲われ壊された事務所の家具を買いに出かける。するとまた事件が…。ネウロが謎を解き、新しい家具も手に入れ、すべてが新しくまわり始めたと思われたが、その裏である人物も動き始めていた。
一方では、軍事ヘリ代の借金返済のための、弥子のアルバイト大作戦開始です!
◇
HALが消去されたときの弥子とネウロの温度差。「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」の台詞は1話の父親の葬式のときにも言っています。まったく空気の読めない男です。魔人ゆえの無神経さとでも言いましょうか。ネウロは謎が喰えさえすれば人の感情などどうでもいいですから。感情がわからないと言いつつも、弥子に嫌味を言ったり嫌がらせをしたりするのは、人の心を理解しているからこそだと思いますが、そこはツッコミません。
ネウロは常時、事件の動機には関わろうとせず謎解きを進めていきます。二時間ドラマで例えるなら、断崖絶壁で犯人が動機を話し出す一番のクライマックス場面だとしても、興味もなく無関心な顔をしています。二つ目のスフィンクスを壊しに行った時も同じでした。だからHALの動機を探るなどお手上げで弥子に任せた。合理的でもあり結果的に成功だったわけです。ネウロに男女の愛情なんて理解不可能でしょう。
しかしながら、ネウロの「日付が変わった」の言葉の意味は、弥子の進化を認めた証。前回の噛み切り美容師のときに言った言葉はここで活かされます。弥子の成長を日付に例え表現しています。背景にある12時少し前の時計が12時ちょうどになり、とうとう日付が変わる。ネウロは伏線だらけと言われる内の、これもひとつ。
名簿の中にある本城刹那の名前や友人の会話からでたヒント。「ネウロ」は推理漫画にお決まりな読者に推理させるという狙いは全くない漫画ですので、そこからパスワードは想像できませんでした。
それと、小ギャグの一つと思われた、5巻でネウロが蓄財しているダイヤ。早坂兄弟にヘリを用意させる代金代わりに使うなんて。また弥子が警察で笛吹宛に置いていった手紙。その内容は後で明らかになりますが、彼らの行動の一つ一つに意味があり、のちに再利用する作者の細かな基盤つくりは見事としか言いようがありません。
HAL編後半からのテンポのよさはハラハラしながら一気に読めてよかったです。これがブリーチならHAL編だけで4年は掛けたでしょう。
あと、春川と刹那の回想で出てきた「本城博士の娘か」「悪意の塊のような病気」「人為的なもの」これらの台詞は伏線です。読み進めていき気がついたときは衝撃的でした。はじめは刹那とⅩは同じ病気だと思っていた私です。あるいは黒幕はⅩだろうと。まさか読者のミスリードを誘うのも作者さんの狙いだったとか?
10巻での印象的な台詞はこれです。HALが繰り返しつぶやく「違う(ノット)消去(デリート)再試行(リトライ)」これは、刹那との事情を知ってしまってから再び読むと切なくなります。
また「何度退けても向かってくる。人間とは比べようもなくタフで知能的。人間には通じる脅しも君には通用しない。決して諦めない執念」うまく的中させたネウロへの褒め言葉です。まさにネウロとはこんな奴。HALでさえ敬服してしまうほどですから。
もう一つ、感心するのは作者さんの家具のデザインのセンスのよさです。魔界能力のデザインも独特で凝っているとは思いましたが、特にテーブルや椅子は商品化して欲しいほどの美しさ。そのかわり人物に関しては、弥子が6頭身だったり8頭身だったり、ネウロとの身長差がまちまちだったり、ありえない関節の曲がり具合だったり、おや?と思う点はございますが、それは作者さんの個性として受け取ります。
最後に登場した葛西。なにやら意味深なことを言っていますが、これも読者を翻弄する作戦かも…?
そして、まず二つのスパコンを見つけ出し破壊に成功した。そこでHALから言われた「まるで無力な操り人形」の言葉に弥子は傷つく。私が行かなくてもネウロ一人で敵を倒すことはできる。私はいる意味が無いと……。
同じ頃、元ハッカーの刑事篚口結也は、電子ドラッグに対抗する特効薬のプログラムの制作を完了させていた。
中毒患者たちが電子ドラッグにアクセスすると、そのページをハッキングしワクチンを脳へ刷り込み元通りにする手はずだった。ところがそのすべてをHALは計算済み。中毒患者たちはワクチンの反転映像を見せられても、もう一度反転して受け入れるようにプログラムされていた。篚口の特効薬作戦は失敗し、逆に篚口が電子ドラッグ映像を見せられ、HALに支配されてしまった。
ネウロたちが3つ目のスパコンが置かれた場所へ行くと、そこで待ち受けていたのは篚口。篚口はスパコンをトレーラーに乗せ、山奥へと逃げる。後を追うネウロだが、これは篚口の巧妙な罠。ネウロは車ごと谷底へ落ちてしまう。弥子の救出を優先したネウロはかなりのダメージを負い絶体絶命のピンチ。
ドラッグに冒された篚口は、狂乱しネウロを殺そうとむきになっている。しかし弥子は見抜いていた。篚口が操られていないことを。洗脳されている人間は罪の意識が無い。でも篚口には罪悪感があるからだと。
弥子のお陰で冷静になれた篚口。ネウロが3つ目のスパコンを破壊したが、時はすでに遅し。HALは次なる手段を用意していた。
HALは東京湾に入港した原子力空母を乗っ取り支配していた。さらに政府に世界中のスパコンを空母に運び込ませるように要求した。
急いでネウロが再びネットの世界へ侵入するも、直前にHALは新しいスフィンクスをインストールさせていた。しかもHALのいる奥へは「パスワード入力」の壁があり、到達できない。
そのとき、ネウロが血を吐き倒れた。謎を食えず空腹の上に、これまでに受けた傷のダメージと魔力の大量使用で体力の限界に来ていたのだ。
ネウロは弥子に指令を出す。自然治癒で回復するまでの3日間で、弥子がパスワードを解読しろと。重要なパスワードほど制作者の感情に沿って設定される。だが魔人のネウロには人間の心情は読み取れない。そのため弥子がパスワードを解くしかないのだ。一度でも間違えれば原子力空母が破壊され、首都圏は放射能の海になる。HALはヒントを与えた。パスワードは私の目的そのものだと。
弥子にできてネウロにできないこと。それは人間の心を深く知ること。弥子はネウロの期待に応えるため、世界を救うため、私がやるしかないと決意しパスワード解読のための資料集めに走る。
一方、ネウロは早坂兄弟にある物を調達させ、空母に乗り込む準備をしていた。
弥子は、たくさんの資料の中にある春川教授の講義映像から、何かを感じ取りひとつの推測を浮上させる。そして3日目の朝、これまでに掴んだヒントからある一つの答えを導き出した。
早坂の用意した軍用ヘリで空母に乗り込むネウロと弥子。さっそくネウロがネットの世界へと潜り込みHALと向かい合う。同時に弥子はパスワードを入力。解読は成功したのだ。
ネウロとHALを隔てていた壁は取り除かれ、ネウロは大量で良質の謎を喰った。狂喜して兵隊たちを倒し暴れまわる片方で、すべてを封印され動きを止められたHALが現れ弥子に問う。どうやってパスワードを解読したのかと。弥子は語る。空母を乗っ取り世界中のスパコンを手に入れ電子ドラッグで兵隊を洗脳し、そこまでしてやり遂げたいHALの目的とは何かを。 ――それは「ある人物を0から作り出すこと」
HALは春川の過去を語り始めた。
数年前、春川は脳に難病を抱えた患者の治療施設に勤めていた。被験者本城刹那は、脳のコントロールを失い脳細胞が破壊される前例の無い病に侵されていた。春川は彼女の治療に全霊を尽くしていたが、その甲斐もなく彼女は息を引き取った。
絶望した春川はデジタル世界で刹那を構築させる研究に情熱を注いだ。しかし、何年かかっても何度計算を繰り返してもとても足りない。生身の人間である春川が生きている内には成し遂げられない。そう悟ったからHALは春川を殺したのだと。HALでさえ世界中のスパコンで何百年も計算し続けても刹那を再構築するのは未知数だ。
だがネウロに破壊された今となればHALの計画も続行不可能。外部の人間が消去するしかない。その役目を弥子にやれと命じる。HALは電子ドラッグのワクチンと消去画面を弥子に見せる。HALの苦しみが理解でき同情する弥子は一度は拒否するも、震えながらエンターキーを押すと、HALは少しずつ消え0に近づいていく。その時、HALが見たものは……。
大切な人を失う辛さが痛いほどわかる弥子は、涙が止まらない。そこへ機嫌よく現れるネウロ。弥子の活躍を称え「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」というネウロの手を払いのけ、「あんたにはわからない」と弥子は声を張り上げる。ネウロは気にすることもなく、「日付も変わった。帰るぞ」とひと言。嵐のような数週間は終わった。
1週間後、日常が戻った弥子とネウロは、中毒者に襲われ壊された事務所の家具を買いに出かける。するとまた事件が…。ネウロが謎を解き、新しい家具も手に入れ、すべてが新しくまわり始めたと思われたが、その裏である人物も動き始めていた。
一方では、軍事ヘリ代の借金返済のための、弥子のアルバイト大作戦開始です!
◇
HALが消去されたときの弥子とネウロの温度差。「貴様は泣くのではなく笑うべきだ」の台詞は1話の父親の葬式のときにも言っています。まったく空気の読めない男です。魔人ゆえの無神経さとでも言いましょうか。ネウロは謎が喰えさえすれば人の感情などどうでもいいですから。感情がわからないと言いつつも、弥子に嫌味を言ったり嫌がらせをしたりするのは、人の心を理解しているからこそだと思いますが、そこはツッコミません。
ネウロは常時、事件の動機には関わろうとせず謎解きを進めていきます。二時間ドラマで例えるなら、断崖絶壁で犯人が動機を話し出す一番のクライマックス場面だとしても、興味もなく無関心な顔をしています。二つ目のスフィンクスを壊しに行った時も同じでした。だからHALの動機を探るなどお手上げで弥子に任せた。合理的でもあり結果的に成功だったわけです。ネウロに男女の愛情なんて理解不可能でしょう。
しかしながら、ネウロの「日付が変わった」の言葉の意味は、弥子の進化を認めた証。前回の噛み切り美容師のときに言った言葉はここで活かされます。弥子の成長を日付に例え表現しています。背景にある12時少し前の時計が12時ちょうどになり、とうとう日付が変わる。ネウロは伏線だらけと言われる内の、これもひとつ。
名簿の中にある本城刹那の名前や友人の会話からでたヒント。「ネウロ」は推理漫画にお決まりな読者に推理させるという狙いは全くない漫画ですので、そこからパスワードは想像できませんでした。
それと、小ギャグの一つと思われた、5巻でネウロが蓄財しているダイヤ。早坂兄弟にヘリを用意させる代金代わりに使うなんて。また弥子が警察で笛吹宛に置いていった手紙。その内容は後で明らかになりますが、彼らの行動の一つ一つに意味があり、のちに再利用する作者の細かな基盤つくりは見事としか言いようがありません。
HAL編後半からのテンポのよさはハラハラしながら一気に読めてよかったです。これがブリーチならHAL編だけで4年は掛けたでしょう。
あと、春川と刹那の回想で出てきた「本城博士の娘か」「悪意の塊のような病気」「人為的なもの」これらの台詞は伏線です。読み進めていき気がついたときは衝撃的でした。はじめは刹那とⅩは同じ病気だと思っていた私です。あるいは黒幕はⅩだろうと。まさか読者のミスリードを誘うのも作者さんの狙いだったとか?
10巻での印象的な台詞はこれです。HALが繰り返しつぶやく「違う(ノット)消去(デリート)再試行(リトライ)」これは、刹那との事情を知ってしまってから再び読むと切なくなります。
また「何度退けても向かってくる。人間とは比べようもなくタフで知能的。人間には通じる脅しも君には通用しない。決して諦めない執念」うまく的中させたネウロへの褒め言葉です。まさにネウロとはこんな奴。HALでさえ敬服してしまうほどですから。
もう一つ、感心するのは作者さんの家具のデザインのセンスのよさです。魔界能力のデザインも独特で凝っているとは思いましたが、特にテーブルや椅子は商品化して欲しいほどの美しさ。そのかわり人物に関しては、弥子が6頭身だったり8頭身だったり、ネウロとの身長差がまちまちだったり、ありえない関節の曲がり具合だったり、おや?と思う点はございますが、それは作者さんの個性として受け取ります。
最後に登場した葛西。なにやら意味深なことを言っていますが、これも読者を翻弄する作戦かも…?
『噛み切り美容師』と呼ばれる殺人犯の捜査に行きたいという弥子。しかしネウロは謎の有無がはっきりしない事件には手を出さないと言う。その代わり弥子とあかねちゃんだけで犯人に接近してオトリ捜査をしろと言う。弥子は犯人と思われる人物に近づくが、簡単に捕らわれてしまう。だがすぐにネウロがアリバイトリックの解明をし弥子を救出。ネウロは弥子の働きぶりに「期待はずれだ、弥子よ。貴様の日付けはいつになったら変わるのだ」と暴言を吐いて去っていく。弥子はその言葉にショックを受ける。「私にネウロが必要とする力があるのだろうか」と。
落ち込む弥子は刑務所のアヤに面会に行く。アヤは弥子に「近い将来、彼はあなたの力を真に必要とするはず」とアドバイス。
元気を取り戻した弥子とネウロのもとへ「Ⅹ」からの犯行予告状が届く。
「Ⅹ」とは、誰にでも変身できる細胞を持つために、本当の自分の正体がわからなくなったという少年。自分の正体を探すために殺した他人の細胞を透明な箱に詰め、『赤い箱』を現場に残し逃げ去る狂気的な殺人者だ。異形のネウロの細胞を観察することで、自分の正体を知るヒントになるという理由でネウロの命を付け狙う。
ネウロと弥子が、犯行予告現場である芸術家の屋敷に行くと、怪しげな家族がいた。そして、この家の主人が一年前に死んだ事件も謎が隠されているとして、ネウロは興味を持つ。
その夜、屋敷で次なる死亡事故が起こる。ネウロが殺人トリックを暴いたその時、謎を喰う瞬間の隙を狙って「Ⅹ」が姿を現す。「Ⅹ」はショットガンでネウロを奇襲攻撃。いつもなら無傷のはずのネウロが重症なことに弥子は驚く。警察が突入するまで時間を稼ごうと、弥子は恐る恐る「Ⅹ」に話しかける。すると「Ⅹ」は芸術家家族の隠された愛情について語りだす。弥子は「Ⅹ」の意外な人間らしさを知る。
場所を変えたネウロと「Ⅹ」の対決現場で、ネウロは「我が輩の体は人間に近づいている」と告白。失望する「Ⅹ」だが、ネウロの圧倒的強さの前にまるで歯が立たない。とりあえずネウロからのきついお仕置きを受け退散。
数日後、二人は連続放火事件を調べていた。火災現場にいた3人の容疑者の中からネウロの推理で犯人を見破った。しかし、その犯人はなぜ放火したくなったか理由がわからないと言い出した。刑事篚口がこの犯罪者は『電子ドラッグ』中毒だと言う。パソコン画面を見た者から、深層意識にある犯罪願望を引き出す犯罪者制作プログラムが、何者かにより作られた可能性があるのだと。ネウロはパソコンの中に潜む謎に興味をそそられる。
その頃、温泉で出会った春川教授が、自分の脳細胞をトレースして作った電人HALを完成させていた。電人HALは、パソコンの中で生きる人工知能でありながら、春川に無断で電子ドラッグをばら撒き犯罪者を蔓延させ、武器の密輸を行うなどの犯罪を実行していた。それに気づき制止しようとする春川だが、HAL がドラッグで操った学生たちによって殺されてしまう。
そんな時、早坂兄弟が「以前、武器密輸した相手は名門大学の学生だった」と吾代に助言してきた。その大学こそ春川教授のいる大学。ネウロと弥子は春川に会いに行くが、誰も行方がわからないと言い、さらにドラッグに犯された学生に襲われる。余裕でかわしたネウロは学生たちを挑発してその場を去るが、世間では電子ドラッグ汚染が広がり始めていた。
ネウロは謎を食うためパソコン内部に侵入するが、妨害プログラムによって攻撃され、謎までたどり着けないでいた。
◇
この頃からネウロは魔力の消耗を危惧している節があります。弥子救出のために魔力を使うことすら惜しがるなんて。ましてや戦闘能力の無い弥子だけで危険な場所へ行かせるなんて。酷すぎやしませんか。けれど、ネウロもちゃんと準備しています。ネウロの側にいる魔界虫。その使用法は弥子誘拐編で明らかになりますが、ちゃんと弥子を監視しているのですね。
今回も小ネタ&伏線があちこちに。
まずは大学講義中に春川が言った言葉。これがかなり重要なのですが、普通はさらりと読み流してしまうので気づくわけが無い。このヒントで気づいた弥子もすごい。温泉編での春川は電車の中や旅館で伏線らしき事を言っていました。もちろんこの時点では春川の計画は誰にも分からないのですから、あとで読み返して初めて意味が分かるという作者が用意した布石だったとは。
また、探偵事務所の向かいの、建築中のビル。このビルは完成後もたびたび使われています。デザインにも意味を持たせている。ただの背景でさえのちに利用するという手の懲りよう。『全体でひとつの作品』と作家さんが言われるポイントは、こういう連続した細かい設定なんだろうなと感心してしまう。
そして、最後の自分像編でのⅩが化けているのが笹塚だと思わせる演出もさすがだと思いました。Ⅹが登場する直前のコマまで読者を笹塚に集中させておいて、ページをめくると「ええーっ」というテクニックは見事です。
この作家さんはページをめくると犯人が豹変するってパターンをよく使うのだけど、その逆を狙ったのが、HAL編でネウロが大学の研究生たちと話をするとき。一人がごそごそしているのでページをめくると!…と思わせておいて何もない。これを二度繰り返し、次は別の人が何か言いかけてページをめくると!…あーやっぱりか!の3段落ちのフェイント攻撃にはやられました。
それと、発見して嬉しかった小ネタは、「忠実うらぎりくん」がコンビニバイト中の吾代の持つジャンプと放火魔の持つ漫画にいたこと。こいつこんなに前から登場していたのね!
弱体化して人間に近づくというネウロは、自分の正体がわからないというⅩに「向上の姿勢こそ人間である証拠」と答えてあげています。この作品のテーマは『人間の進化』。このあたりから人間の可能性について考えさせられる内容になっていきます。人間とは程遠いと思われた二人(ネウロとⅩ)が見せた人間らしさに触れ、弥子はどう進化していくのか。
そこに注目して読むとよりいっそう世界観も広がります。
いよいよ次は、ネウロファン絶賛のHAL編へと入ります。
(1~5巻は前頁にあります)
落ち込む弥子は刑務所のアヤに面会に行く。アヤは弥子に「近い将来、彼はあなたの力を真に必要とするはず」とアドバイス。
元気を取り戻した弥子とネウロのもとへ「Ⅹ」からの犯行予告状が届く。
「Ⅹ」とは、誰にでも変身できる細胞を持つために、本当の自分の正体がわからなくなったという少年。自分の正体を探すために殺した他人の細胞を透明な箱に詰め、『赤い箱』を現場に残し逃げ去る狂気的な殺人者だ。異形のネウロの細胞を観察することで、自分の正体を知るヒントになるという理由でネウロの命を付け狙う。
ネウロと弥子が、犯行予告現場である芸術家の屋敷に行くと、怪しげな家族がいた。そして、この家の主人が一年前に死んだ事件も謎が隠されているとして、ネウロは興味を持つ。
その夜、屋敷で次なる死亡事故が起こる。ネウロが殺人トリックを暴いたその時、謎を喰う瞬間の隙を狙って「Ⅹ」が姿を現す。「Ⅹ」はショットガンでネウロを奇襲攻撃。いつもなら無傷のはずのネウロが重症なことに弥子は驚く。警察が突入するまで時間を稼ごうと、弥子は恐る恐る「Ⅹ」に話しかける。すると「Ⅹ」は芸術家家族の隠された愛情について語りだす。弥子は「Ⅹ」の意外な人間らしさを知る。
場所を変えたネウロと「Ⅹ」の対決現場で、ネウロは「我が輩の体は人間に近づいている」と告白。失望する「Ⅹ」だが、ネウロの圧倒的強さの前にまるで歯が立たない。とりあえずネウロからのきついお仕置きを受け退散。
数日後、二人は連続放火事件を調べていた。火災現場にいた3人の容疑者の中からネウロの推理で犯人を見破った。しかし、その犯人はなぜ放火したくなったか理由がわからないと言い出した。刑事篚口がこの犯罪者は『電子ドラッグ』中毒だと言う。パソコン画面を見た者から、深層意識にある犯罪願望を引き出す犯罪者制作プログラムが、何者かにより作られた可能性があるのだと。ネウロはパソコンの中に潜む謎に興味をそそられる。
その頃、温泉で出会った春川教授が、自分の脳細胞をトレースして作った電人HALを完成させていた。電人HALは、パソコンの中で生きる人工知能でありながら、春川に無断で電子ドラッグをばら撒き犯罪者を蔓延させ、武器の密輸を行うなどの犯罪を実行していた。それに気づき制止しようとする春川だが、HAL がドラッグで操った学生たちによって殺されてしまう。
そんな時、早坂兄弟が「以前、武器密輸した相手は名門大学の学生だった」と吾代に助言してきた。その大学こそ春川教授のいる大学。ネウロと弥子は春川に会いに行くが、誰も行方がわからないと言い、さらにドラッグに犯された学生に襲われる。余裕でかわしたネウロは学生たちを挑発してその場を去るが、世間では電子ドラッグ汚染が広がり始めていた。
ネウロは謎を食うためパソコン内部に侵入するが、妨害プログラムによって攻撃され、謎までたどり着けないでいた。
◇
この頃からネウロは魔力の消耗を危惧している節があります。弥子救出のために魔力を使うことすら惜しがるなんて。ましてや戦闘能力の無い弥子だけで危険な場所へ行かせるなんて。酷すぎやしませんか。けれど、ネウロもちゃんと準備しています。ネウロの側にいる魔界虫。その使用法は弥子誘拐編で明らかになりますが、ちゃんと弥子を監視しているのですね。
今回も小ネタ&伏線があちこちに。
まずは大学講義中に春川が言った言葉。これがかなり重要なのですが、普通はさらりと読み流してしまうので気づくわけが無い。このヒントで気づいた弥子もすごい。温泉編での春川は電車の中や旅館で伏線らしき事を言っていました。もちろんこの時点では春川の計画は誰にも分からないのですから、あとで読み返して初めて意味が分かるという作者が用意した布石だったとは。
また、探偵事務所の向かいの、建築中のビル。このビルは完成後もたびたび使われています。デザインにも意味を持たせている。ただの背景でさえのちに利用するという手の懲りよう。『全体でひとつの作品』と作家さんが言われるポイントは、こういう連続した細かい設定なんだろうなと感心してしまう。
そして、最後の自分像編でのⅩが化けているのが笹塚だと思わせる演出もさすがだと思いました。Ⅹが登場する直前のコマまで読者を笹塚に集中させておいて、ページをめくると「ええーっ」というテクニックは見事です。
この作家さんはページをめくると犯人が豹変するってパターンをよく使うのだけど、その逆を狙ったのが、HAL編でネウロが大学の研究生たちと話をするとき。一人がごそごそしているのでページをめくると!…と思わせておいて何もない。これを二度繰り返し、次は別の人が何か言いかけてページをめくると!…あーやっぱりか!の3段落ちのフェイント攻撃にはやられました。
それと、発見して嬉しかった小ネタは、「忠実うらぎりくん」がコンビニバイト中の吾代の持つジャンプと放火魔の持つ漫画にいたこと。こいつこんなに前から登場していたのね!
弱体化して人間に近づくというネウロは、自分の正体がわからないというⅩに「向上の姿勢こそ人間である証拠」と答えてあげています。この作品のテーマは『人間の進化』。このあたりから人間の可能性について考えさせられる内容になっていきます。人間とは程遠いと思われた二人(ネウロとⅩ)が見せた人間らしさに触れ、弥子はどう進化していくのか。
そこに注目して読むとよりいっそう世界観も広がります。
いよいよ次は、ネウロファン絶賛のHAL編へと入ります。
(1~5巻は前頁にあります)
父親を殺されてしまった女子高生桂木弥子。悲しみに暮れる弥子の前に、突然魔界からやってきた魔人脳噛ネウロが現れる。ネウロは魔界の「謎」を喰い尽した末、脳髄の空腹を満たすために地上に現れたのだという。ネウロの言う「謎を喰う」とは、犯罪者がトリックを暴かれた時点で敗北感を感じれば、その人間から「謎」が放出される、そのエネルギーを喰うことらしい。
ネウロは謎を食う、つまり事件を解決するにあたり、魔人として目立つのを避けるため、弥子を探偵役に仕立て、自分は助手に徹し、数々の難事件を解決していく。
強制的に探偵をやらされていた弥子だが、父親の事件を解決してくれた恩義や、多くの人と出会えることの興味から、探偵コンビを続けていく決意をする。
父親の事件を捜査をしていた笹塚刑事。低いテンションと高い実力と言われる無表情の彼だが、事件現場に必ず現れる弥子を気遣い、その後も良き協力者となる。10年前に家族を何者かに殺された過去を持ち、この事件が彼の人生を大きく狂わす事になる。
やがてネウロはまず手始めに怪しげな金融会社を乗っ取り「桂木弥子魔界探偵事務所」を設立する。金融会社の社員だった吾代を雑用係(奴隷)として雇う。
探偵事務所設立後、第一号の依頼者は、世界的カリスマ歌手アヤ・エイジヤ。アヤは自分の周りで立て続けに起きた不審死に疑念を持ち、事務所を訪れたのだという。しかし、この不審死はアヤが起こした殺人事件だった。事件解決現場をテレビで放映されたことにより、弥子の知名度は全国的なものとなった。だが、これはより多くの謎が弥子の元に集まるためのネウロの計算。人間の知能をはるかに超えるネウロは謎解きだけでなく、先を読み用意周到に準備している。だが人間と同様の感情を持たないため、細かな心理分析は苦手としていた。心の内側を探る役目として、弥子を側に置いているとネウロは言う。
次なる事件現場で二人は「Ⅹ(サイ)」と呼ばれる殺人鬼と遭遇する。「Ⅹ」は殺した人間を箱に詰め加工し、自分の細胞を自在に変異させ、他人に「成る」ことができる特殊能力を持つ人間。「Ⅹ」は弥子に強烈な脅威を与え、しばらく身を潜めるのだった。
その後、弥子とネウロが行った温泉旅行で、春川教授という人物と出会う。のちにこの春川は世間を騒がす大事件に関わる重要人物となる。
旅館での殺人事件を解決後、旅行から帰ると、留守番していた吾代がユキと名乗る男に襲われ倒れていた。後日ネウロと弥子がユキに呼び出された場所へ行くと、調査機関の社長、望月が現れ、知名度のある弥子を会社の広告塔として雇いたいという。怪しい雰囲気に断ろうとする弥子だが、ネウロは謎も無いのにあっさり引き受けると言う。
望月と早坂兄弟(ユキ)が弥子たちを雇った本当の理由は、麻薬取引の罪を弥子たちに着せ、警察が踏み込んでいる間、自分たちは別の裏取引で武器を密輸しようと企んでいたのだ。しかし、ネウロに暴かれ失敗。早坂兄弟はネウロの驚異的な力を見せ付けられる。ネウロが謎も無いのに望月の依頼を引き受けた理由は、望月の調査会社を支配し、謎の多そうな事件をネウロの元へと運ばせるためだった。
そして、実は早坂たちの取引の相手というのが、のちに起こる驚愕の大事件に関係していたと知るのは、しばらく後の話である。
◇
「ネウロ」の感想や大まかなあらすじを書くのは他の方もされているので、全巻すべてのあらすじを書いてみることにしました。とは言っても独断で省いている箇所もあります。ネタバレ注意。
すでに5巻までで、伏線が張りめぐらされています。見つけた伏線はここ。
あかねちゃん
春川教授
笹塚刑事
ネウロの弱体化
3巻のネウロの台詞
あかねちゃんとは、事務所の壁に埋め込まれた死体の髪の毛。ネウロの魔力で髪の毛だけ生き返ったという、もう何でもアリな設定。このあかねちゃん、秘書として大活躍なんだけど、結局最終回まで、謎は解いてもらえず仕舞い。伏線未回収のまま放置?と思われたのだけど、これも作者の構想のうち。最終回でネウロが魔界から帰ってくる理由付けのためにあえて残してあるんですね。まだ解いてない謎がある、とはあかねちゃんのこと。
春川教授が温泉で言う
「近いうちに君たちは春川英輔の名前を顔を見るかもしれん。偉大な研究を成就させた男として」
と言う台詞。これはこの後起きる「電人HAL」のことを指しているかと思いきや、最終巻の救助システムのことだったんですね。(弥子はHALのことだと言っているけど)この時点で春川はHALの暴走計画は知りませんから。だとしたらなんて長ーーい伏線。
笹塚刑事がヒストリア事件で見せた天才的な射撃の腕前。同僚の刑事が言います。あの腕前は警察学校で習うレベルじゃない。笹塚は家族が殺されてから一年間、姿を消していた。その間何をしていたかは誰も知らない、と。
はい、ここ伏線です。20巻で笹塚の正体が明らかになるまで、読者も弥子も疑いもしなかった笹塚の本性を、ここでほのめかしていたのですね。これもまた長い伏線。本当に天才的だと思う。この作者さん。怖ろしく練りこまれた構成力。
そして、笹塚も周りの人たちも、笹塚の家族を殺したのは「Ⅹ」だと決め付けています。しかし「昔のⅩの手口は今より荒々しいものだった」という台詞があります。これもまたさり気なく伏線が張ってあります。読者も思い込んでいたⅩが犯人説をひっくり返すひと言だったのに、細かすぎて気づかない。(というか、私だけか? わかりやすい伏線に気がついてないのは。)
後半になって伏線回収されて初めて気づく、「ここはそういう意味だったのか」「この台詞はここで活かされるのか」と判明したときの驚き。ネウロファンが絶賛するのは、そういう何年もかけたロングパスの伏線と完成度だと思うんだよね。
そして、ネウロの弱体化も早い段階で明らかにされています。1巻で弾丸をまばたきで受け止めたり、核弾頭でも殺せないと言ったり、ネウロは不死身だと読者に思わせておきながら、実は、温泉で弥子を守るため弾丸を指で弾いたときの出血がすぐに治らなかったり、早坂が撃ってきたマシンガンの弾が、数日後に体から出てきて血だらけになったり、ネウロが不死身ではないことを暗示しています。人間界では加速的に弱体化することは7巻でネウロ自身がⅩに告げることで読者も知るのですが、こんなに早い段階で主人公の弱みを言っちゃっていいの?最強の敵に、ネウロは勝てるの?という不安要素になるのですね。読者をはらはらさせる持って行き方がうまい。
それから、3巻でネウロの言った
「資質と欲望が人間をどこまでも進化させる。その進化が魔界には無い多種多様な謎を生むのだ。いずれ貴様はより多くの人間を理解するよう進化するだろう。たとえそれが貴様が理解できないという、あのⅩでもだ」
という台詞。Ⅹへの恐怖で探偵を続けることに怖気づいた弥子に言うのですが、このときのこの言葉が、最終戦で現実になり、弥子も最終巻で言葉の意味を深く知ることとなるのです。
ネウロの虐待や言葉攻めもギャグとして単純に笑えるし、弥子の成長やネウロに芽生えた人間への興味が、少しずつ描かれていくのも、好感をもって見ることができます。
ネウロのドSも弥子と吾代限定らしく、よそ様には好青年風に振舞っている。弥子へのドSは仲間意識の表われ……という意味ですかね。いや単に所有物として遊んでいるだけでしょう。でも悪意は感じられない。「好きだからいじめたくなる」的心理かもしれない(違うな)。このあたりから、少しずつ二人の距離が縮まった感じもある。
まだ、5巻までなのに、長々と書いてしまった。つぎへ続く。
ネウロは謎を食う、つまり事件を解決するにあたり、魔人として目立つのを避けるため、弥子を探偵役に仕立て、自分は助手に徹し、数々の難事件を解決していく。
強制的に探偵をやらされていた弥子だが、父親の事件を解決してくれた恩義や、多くの人と出会えることの興味から、探偵コンビを続けていく決意をする。
父親の事件を捜査をしていた笹塚刑事。低いテンションと高い実力と言われる無表情の彼だが、事件現場に必ず現れる弥子を気遣い、その後も良き協力者となる。10年前に家族を何者かに殺された過去を持ち、この事件が彼の人生を大きく狂わす事になる。
やがてネウロはまず手始めに怪しげな金融会社を乗っ取り「桂木弥子魔界探偵事務所」を設立する。金融会社の社員だった吾代を雑用係(奴隷)として雇う。
探偵事務所設立後、第一号の依頼者は、世界的カリスマ歌手アヤ・エイジヤ。アヤは自分の周りで立て続けに起きた不審死に疑念を持ち、事務所を訪れたのだという。しかし、この不審死はアヤが起こした殺人事件だった。事件解決現場をテレビで放映されたことにより、弥子の知名度は全国的なものとなった。だが、これはより多くの謎が弥子の元に集まるためのネウロの計算。人間の知能をはるかに超えるネウロは謎解きだけでなく、先を読み用意周到に準備している。だが人間と同様の感情を持たないため、細かな心理分析は苦手としていた。心の内側を探る役目として、弥子を側に置いているとネウロは言う。
次なる事件現場で二人は「Ⅹ(サイ)」と呼ばれる殺人鬼と遭遇する。「Ⅹ」は殺した人間を箱に詰め加工し、自分の細胞を自在に変異させ、他人に「成る」ことができる特殊能力を持つ人間。「Ⅹ」は弥子に強烈な脅威を与え、しばらく身を潜めるのだった。
その後、弥子とネウロが行った温泉旅行で、春川教授という人物と出会う。のちにこの春川は世間を騒がす大事件に関わる重要人物となる。
旅館での殺人事件を解決後、旅行から帰ると、留守番していた吾代がユキと名乗る男に襲われ倒れていた。後日ネウロと弥子がユキに呼び出された場所へ行くと、調査機関の社長、望月が現れ、知名度のある弥子を会社の広告塔として雇いたいという。怪しい雰囲気に断ろうとする弥子だが、ネウロは謎も無いのにあっさり引き受けると言う。
望月と早坂兄弟(ユキ)が弥子たちを雇った本当の理由は、麻薬取引の罪を弥子たちに着せ、警察が踏み込んでいる間、自分たちは別の裏取引で武器を密輸しようと企んでいたのだ。しかし、ネウロに暴かれ失敗。早坂兄弟はネウロの驚異的な力を見せ付けられる。ネウロが謎も無いのに望月の依頼を引き受けた理由は、望月の調査会社を支配し、謎の多そうな事件をネウロの元へと運ばせるためだった。
そして、実は早坂たちの取引の相手というのが、のちに起こる驚愕の大事件に関係していたと知るのは、しばらく後の話である。
◇
「ネウロ」の感想や大まかなあらすじを書くのは他の方もされているので、全巻すべてのあらすじを書いてみることにしました。とは言っても独断で省いている箇所もあります。ネタバレ注意。
すでに5巻までで、伏線が張りめぐらされています。見つけた伏線はここ。
あかねちゃん
春川教授
笹塚刑事
ネウロの弱体化
3巻のネウロの台詞
あかねちゃんとは、事務所の壁に埋め込まれた死体の髪の毛。ネウロの魔力で髪の毛だけ生き返ったという、もう何でもアリな設定。このあかねちゃん、秘書として大活躍なんだけど、結局最終回まで、謎は解いてもらえず仕舞い。伏線未回収のまま放置?と思われたのだけど、これも作者の構想のうち。最終回でネウロが魔界から帰ってくる理由付けのためにあえて残してあるんですね。まだ解いてない謎がある、とはあかねちゃんのこと。
春川教授が温泉で言う
「近いうちに君たちは春川英輔の名前を顔を見るかもしれん。偉大な研究を成就させた男として」
と言う台詞。これはこの後起きる「電人HAL」のことを指しているかと思いきや、最終巻の救助システムのことだったんですね。(弥子はHALのことだと言っているけど)この時点で春川はHALの暴走計画は知りませんから。だとしたらなんて長ーーい伏線。
笹塚刑事がヒストリア事件で見せた天才的な射撃の腕前。同僚の刑事が言います。あの腕前は警察学校で習うレベルじゃない。笹塚は家族が殺されてから一年間、姿を消していた。その間何をしていたかは誰も知らない、と。
はい、ここ伏線です。20巻で笹塚の正体が明らかになるまで、読者も弥子も疑いもしなかった笹塚の本性を、ここでほのめかしていたのですね。これもまた長い伏線。本当に天才的だと思う。この作者さん。怖ろしく練りこまれた構成力。
そして、笹塚も周りの人たちも、笹塚の家族を殺したのは「Ⅹ」だと決め付けています。しかし「昔のⅩの手口は今より荒々しいものだった」という台詞があります。これもまたさり気なく伏線が張ってあります。読者も思い込んでいたⅩが犯人説をひっくり返すひと言だったのに、細かすぎて気づかない。(というか、私だけか? わかりやすい伏線に気がついてないのは。)
後半になって伏線回収されて初めて気づく、「ここはそういう意味だったのか」「この台詞はここで活かされるのか」と判明したときの驚き。ネウロファンが絶賛するのは、そういう何年もかけたロングパスの伏線と完成度だと思うんだよね。
そして、ネウロの弱体化も早い段階で明らかにされています。1巻で弾丸をまばたきで受け止めたり、核弾頭でも殺せないと言ったり、ネウロは不死身だと読者に思わせておきながら、実は、温泉で弥子を守るため弾丸を指で弾いたときの出血がすぐに治らなかったり、早坂が撃ってきたマシンガンの弾が、数日後に体から出てきて血だらけになったり、ネウロが不死身ではないことを暗示しています。人間界では加速的に弱体化することは7巻でネウロ自身がⅩに告げることで読者も知るのですが、こんなに早い段階で主人公の弱みを言っちゃっていいの?最強の敵に、ネウロは勝てるの?という不安要素になるのですね。読者をはらはらさせる持って行き方がうまい。
それから、3巻でネウロの言った
「資質と欲望が人間をどこまでも進化させる。その進化が魔界には無い多種多様な謎を生むのだ。いずれ貴様はより多くの人間を理解するよう進化するだろう。たとえそれが貴様が理解できないという、あのⅩでもだ」
という台詞。Ⅹへの恐怖で探偵を続けることに怖気づいた弥子に言うのですが、このときのこの言葉が、最終戦で現実になり、弥子も最終巻で言葉の意味を深く知ることとなるのです。
ネウロの虐待や言葉攻めもギャグとして単純に笑えるし、弥子の成長やネウロに芽生えた人間への興味が、少しずつ描かれていくのも、好感をもって見ることができます。
ネウロのドSも弥子と吾代限定らしく、よそ様には好青年風に振舞っている。弥子へのドSは仲間意識の表われ……という意味ですかね。いや単に所有物として遊んでいるだけでしょう。でも悪意は感じられない。「好きだからいじめたくなる」的心理かもしれない(違うな)。このあたりから、少しずつ二人の距離が縮まった感じもある。
まだ、5巻までなのに、長々と書いてしまった。つぎへ続く。
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Re: Kさま
朔の月(さくのつき) ですよね。私も自分で書いていながら後で読み返すと、やっぱ違うな~と思ったので、次の完結編でその辺を書き足すつもりでいました。
ご指摘通り、弥子が推理した、「HALを完成させ公表しようとしていた」であっていると思います。
結果的に主人公を助けた「偉大な研究」に、たまたまそうなっただけのことです。
それにしても、この長ったらしい文章を読んでくださる人がおられたとは。嬉しいです。ありがとうございます。けっこう大変なんです。あらすじを書くのって。
K 春川が言った「偉大な研究」は電人HALで間違いないと思います。
数年かけて作った電人HALをさしおいて、片手間で完成させた救助システムを春川が「偉大な研究」と評するとは思えないので。
朔の月(さくのつき) ですよね。私も自分で書いていながら後で読み返すと、やっぱ違うな~と思ったので、次の完結編でその辺を書き足すつもりでいました。
ご指摘通り、弥子が推理した、「HALを完成させ公表しようとしていた」であっていると思います。
結果的に主人公を助けた「偉大な研究」に、たまたまそうなっただけのことです。
それにしても、この長ったらしい文章を読んでくださる人がおられたとは。嬉しいです。ありがとうございます。けっこう大変なんです。あらすじを書くのって。
K 春川が言った「偉大な研究」は電人HALで間違いないと思います。
数年かけて作った電人HALをさしおいて、片手間で完成させた救助システムを春川が「偉大な研究」と評するとは思えないので。
「今まで読んだ中で一番好きな漫画はネウロ」
と言っていながら、全巻そろえて持っていなかったのです。
少しずつブックオフで揃えていけばいいかなって、呑気にかまえていたら、なんと。
ネウロは今どこに行っても品薄状態。出版元も製造中止で、手に入らないんだとか。
まさか、それは都会の話で、島根なら簡単に手にはいるでしょ。いやまてよ、そういえばブックオフでもあまり見かけないぞ。
嫌な予感しながら、慌てて出雲松江のブックオフ各店、今井書店へネウロ求めて車で走りましたよ。暇ですよ。
したらば、やはり、ない。ない。
我が家には、コミックス前半はあるけど、16巻から最終巻までの一番大事な部分がないの。
そんなー。
もうここしかない。リサイクルショップの万代書店へ車をぶっ飛ばしました。
……神。神よ。
ネウロ全巻23巻+小説版がセットで、ひとつだけ残ってましたー。
書店で買える日本で最後のネウロだったりして。6,400円。
即、お買い上げ。大人買いできる年齢でよかった。
_convert_20120825124722.jpg)
大人買いできる年齢で漫画を買う私。
…我が家に15巻までが2冊ずつある。どうする、これ。
[追記]
松井先生の新連載、『暗殺教室』が7月から連載スタートしたばかりなのに、データベースでランキング1位に!
相変わらずぶっ飛んだ内容で、期待できそう。次はどうなるか気になるワクワク感のある漫画です。
ネウロの頃は、人物の作画が、あまりにもヘタ不自然過ぎたけど、絵が上手くなってるー。
早くコミックス発売されないかな。
教訓:『欲しい漫画は、ためらわず買うべし』

ネットでも残りわずかだって。どうなっているの。裏で誰かが動いている。まさか、シックス……。
[さらに追記]
重版されます。10月、書店向けに予定だそうです。暗殺教室のヒットでネウロを知った人も多く、ネットでもネウロ品薄うわさが広まったので、重版に踏み切ったのでしょうか。仕入れてくれる書店がいくつあるか、そこが問題。
と言っていながら、全巻そろえて持っていなかったのです。
少しずつブックオフで揃えていけばいいかなって、呑気にかまえていたら、なんと。
ネウロは今どこに行っても品薄状態。出版元も製造中止で、手に入らないんだとか。
まさか、それは都会の話で、島根なら簡単に手にはいるでしょ。いやまてよ、そういえばブックオフでもあまり見かけないぞ。
嫌な予感しながら、慌てて出雲松江のブックオフ各店、今井書店へネウロ求めて車で走りましたよ。暇ですよ。
したらば、やはり、ない。ない。
我が家には、コミックス前半はあるけど、16巻から最終巻までの一番大事な部分がないの。
そんなー。
もうここしかない。リサイクルショップの万代書店へ車をぶっ飛ばしました。
……神。神よ。
ネウロ全巻23巻+小説版がセットで、ひとつだけ残ってましたー。
書店で買える日本で最後のネウロだったりして。6,400円。
即、お買い上げ。大人買いできる年齢でよかった。
_convert_20120825124722.jpg)
大人買いできる年齢で漫画を買う私。
…我が家に15巻までが2冊ずつある。どうする、これ。
[追記]
松井先生の新連載、『暗殺教室』が7月から連載スタートしたばかりなのに、データベースでランキング1位に!
相変わらずぶっ飛んだ内容で、期待できそう。次はどうなるか気になるワクワク感のある漫画です。
ネウロの頃は、人物の作画が、あまりにも
早くコミックス発売されないかな。
教訓:『欲しい漫画は、ためらわず買うべし』
![]() | 【全巻】【集英社 完結セット本】松井優征 魔人探偵 脳噛ネウロ 全23巻セット(まじんたんていのうがみねうろ)【中古】afb【マラソンsep12_関東】【RCP1209mara】 価格:8,800円 |

ネットでも残りわずかだって。どうなっているの。裏で誰かが動いている。まさか、シックス……。
[さらに追記]
重版されます。10月、書店向けに予定だそうです。暗殺教室のヒットでネウロを知った人も多く、ネットでもネウロ品薄うわさが広まったので、重版に踏み切ったのでしょうか。仕入れてくれる書店がいくつあるか、そこが問題。
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